第19話「恋の勝負

EVAのシンクロテスト、シンスケ・アスカ・レイが、LCLに浸っていた。

「初号機 シンクロ率59% 零号機 シンクロ率60% 弐号機 シンクロ率45%」

「アスカ・・・、ちょっと数字が悪いわね。(リツコ)」

(・・・アスカの未来のことも本人に話してしまったからな。気になってるんだろう。歴史を知ったことが吉と出るか凶と出るか、賭けだな。)

アスカに試練の時が始まっていた。


その夜、レイの自宅で、茶を飲みながら、老人のように話し合うシンジ兄弟の姿があった。

「シンジ、悪いが次の使徒のことなんだが・・・。」

「わかってるよ。虚無空間ってのに飛び込むんでしょ。怖いけど、やってみるよ。・・・それよりもアスカのことなんだけど。」

「そればかりは、アスカに任せるない。避けて通れない試練なんだよ、これは。」

「そうかもね。ところで兄さん、綾波に変なことしてないだろうね。」

「なんだよ変なことって。信用ないな。俺はお前だろ。」

「シンスケ君、私は別に変なことしても言いのよ。」

「いつのまにそこにいたの綾波?」

「シンジ君・・・。」

「えっ」

「やっと私にしゃべってくれたね。」

「あ、うん。」

(そうだな。あれからずっと綾波と話してなかったもんな。)

「あ、そうそうシンジ、俺達、明日、デートするから。」

「シンスケ君が、第3新デパートに連れてってくれるの。」

(が〜ん、もう綾波は兄さんに取られちゃったのか。でも、しばらく恋人とか言ってたくせに口も聞かなかったからな。しょうがないのかな。はぁ〜。)

(フフフ・・・、シンジのやつ作戦がかなり効いてるようだな。これで、シンジがレイに対してどう接していいかわからずに、黙まりになってる場合じゃなくなっただろう。そんなことしてたら、せっかく作った恋人を俺に持ってかれちゃうからな。)


こそこそ、翌日、第3新デパートで兄とレイを監視するシンジの姿が会った。

(なに・・・?あの子。)

周りの道行く人に、そう思われてしまっている、下手な監視であった。シンスケも気づいていたりする。

(・・・まるわかりだなシンジ。よし、思いっきり焼き餅させてやるか。)

ケーキ屋に入っていく、シンスケとレイを尾行しつづけるシンジ。すると、シンスケがレイにショートケーキをお口にあ〜んをさせながら食べさせている。

(そ、そんな〜。)

顔面蒼白のシンジ。さらに今度は、反対にレイがシンスケに、ムースケーキをお口をあ〜んさせて食べさせている。さらに手を組みながら歩く二人を見て、シンジはますます顔が青くなるのであった。

しかも、二人のいちゃつき、はこれだけではなかった。公園に行くといきなり、シンスケがレイにキスをした。

(シ、シンスケ君。・・・ぽっ。)

二人のキスは、いきなりディープであった。嫉妬に狂うシンジ。

(兄さん、許さないぞ!絶対、綾波を奪い返して見せるぞ。)

レイが人間ではなかった事を知り、どう接して良いか、わからなかったシンジだが、今日はっきりと自分の”恋人”としてシンスケから取り戻すことを決意した。シンスケの策は見事成功したと言える。だがシンスケは

(ああ、レイとキス。・・・もう、最高。)

始めは、シンジが綾波と、元のように接することができたなら、本来この時代の人間でない自分は身を引くつもりであったのだが・・・。シンスケには、それができなくなってしまった。

(もう、完全にレイにほれちまったみたいだな。未来であいつを見殺しにした、俺にそんな資格あるわけないのにな。)

第16使徒戦、自分の目の前で自爆しようとするレイをシンジは止められなかった。そして、その後出会う事になった3人目の綾波に対しても、信じられないレイの秘密に目を背けてしまった。

彼女の自分よりもつらい気持ちに気づいてあげられなかった。もう取り返しのつかない、過去の・・・、いや未来の出来事である。

「シンスケ君どうしたの?キス、よくなかったの・・・。」

「悪い・・・、前の君のこと思い出してしまった。」

(前の私・・・。私であって、私でない私・・・。シンスケ君は、今の私と、前の世界の私が全然違うと言っていた。前の私ってどんなふうだったの。)

「シンスケ君と私の前のこと、もっと詳しく教えて。」

「そうだな・・・。第5使徒戦あたりまでは、あそで、のぞき見してるシンジと綾波の関係とほとんど変わらなかったよ。もっとも俺はシンジよりもっと情けなかったけどね。」

(ば、ばれてたのか・・・。)

姿をあらわすシンジ。レイは今まで気づいていなかったようで、ハッとした表情になる。

「いつから、知ってたの兄さん?」

「・・・始めから、丸見えだ。」

「ええ〜、じゃあ、あのケーキをあ〜んして食べさせたり、手をつないだり、キスをしていたのは、僕が見ていたのを知っていたのにやったの。」

綾波の顔がみるみる赤くなっていく。シンジは意外に平静な表情のままだ。

「もちろんだ。お前に、俺に対する嫉妬心を作る為にわざとやったんだ。」

???、わけがわからないシンジとレイ。

「その第5使徒戦の後、俺とレイは恋人同士なんかにはならずに・・・、俺もレイもお互いに、ただの他人だった。そして第16使徒戦、レイは自爆した。他人とはいってもさすがに、悲しかったよ。

「でも、その後レイの秘密を知ってしまって、俺はすっかり三人目のレイから、いや、それ以上に今のレイから逃げてしまった。恥ずかしいことだが、レイを人間として見れるようになったのは、こっちに来てからさ。」

「だから俺には、シンジがレイの秘密を知ったら、当分立ち直れないことはわかっていた。恋人だったから、なおさらにな。でも、早く立ち直ってくれないと、使徒戦のこともあるから、ゆっくり時間をかけて・・・と言うわけにはいかない。」

「そこで、俺はレイに近づいて恋人になろうとした。大事な恋人のレイが獲られそうとあっちゃ、人間だとか人間でないとか気にしてるわけには行かなくなると思ってな。その結果はもうわかってるな。」

シンジは、しばらく兄を見つめながら、う〜んと考えてると、あることに気付いた。

「じゃあ、兄さんは、本当は綾波と恋人になる気はないの?」

ほっとした顔のシンジ。しかしレイの顔は複雑そうだ。

「・・・最初はそのつもりだったんだけどな。でも、俺、本当にレイの事好きになっちまった。だから、勝負だシンジ。レイは俺の恋人にするぞ!」

「・・・わかったよ、兄さん。その勝負受けてたつよ。」

ふふふ、レイは少しわらいながら

「おかしな勝負ね。シンジ君とシンジ君で勝負するなんて。・・・同じ人をどっちか選べなんて、私どうしたら言いかわからないわ。」

三人はゆかいに大笑いしていた。


夕食の時間、ポトフを食べながら雑談をする二人。ミサトは今日も帰りが遅いようだ。

「さて、明日は母さんの命日か。」

「でも、母さんって初号機の中なんでしょ。墓にいっても意味ないような気がするんだけど。」

「そうだよな。なのに、何故父さんは、墓参りしてるんだろうな?まあ、一応行くとしますか。」

「そうだね。」

レイの秘密を知ってしまったが、すっかり立ち直ったシンジ。シンスケは”あの頃”の自分とのあまりの違いに、大きな驚きを感じていた。


後書き

ついに、レイ獲得戦争開始です。これからはシンジとシンジがレイを争うという世にも珍しい話しになっていきます。たぶんエヴァSS業界初のはずだ。(違ってたら、ごめんなさい。)

次回予告

第12使徒戦。シンジは、使徒の虚無空間に飛びこむという、危険な作戦を取らざるを得なかった。果たして、初号機は、未来同様、暴走してくれるのであろうか。次回エヴァ2回目<生存可能時間30分>見てね!


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