「・・・・・・・・信じられないわね・・・・・・・・」

太公望とシンジについて説明を聞いたリツコの第一声である。

「んなこといっても真実なんですから。仕方が無いでしょう?」

シンジがリツコの台詞に突っ込む。

ちなみに、一同はケイジへ続く道を進んでいる最中であった。

「真実といっても限度があるわ。

 誰が3千年生きてる太公望とその弟子になって道士になった人間を信じるというの?」

「ぼかぁ、信じましたけどねえ、道士の存在は。・・・・・・・・頭が固いと柔軟な反応が出来ませんよ?

 そうだ!嫌でも信じさせるためにリツコさんの顔にある小じわを倍にして差し上げましょう。」

そう言ってルンルンと上機嫌に定界珠を取り出すシンジ。

それを見てリツコは慌てふためいた。

「い、いえ、信じる、信じるからお願い、止めて!これ以上年をとった事を実感したくないのよ!」

ほぼ半狂乱で叫ぶリツコ。

「へへ〜んだ、私はまだ20代だから小じわはまだ出て来てないもんね〜♪」

ミサトはその様子を笑いながら鑑賞していた。

「よ〜し・・・・・・・・ちっ、ち〜、疾ッ!」

シンジが気合をかけると定界珠が淡く光り始める。

そして、リツコの顔に異変が起きた。

「いやああああ!!やめてええええええええええ!!!!

 ・・・・・・・・・って、あれ?」

呆然と自分の顔を触るリツコ。

小じわが全て無くなったばかりか、肌に張りが出ているのに気が付いた。

呆然とするリツコを見て、シンジは楽しそうに笑って見ている。

「ふふっ、流石に僕もそこまで鬼じゃないです。4〜5歳ほど若返らして見ました。」

悪戯っぽく笑うシンジを、リツコは神をも崇めるような眼差しで見つめた。

「あ〜、ずるい!4〜5歳ってことは私より若いって事じゃない!?シンジく〜ん、私にもぉ〜。」

「20代なんだから別に良いでしょう?とにかく、これで信じることは出来ましたか?リツコさん。」

「ああ!あの頃のお肌がまた戻ってきたのね!!ううっ・・・・・・・ありがとう、シンジ君。

 信じるわ!!貴方が神だとか妖怪だとか使徒だとか言っても全て信じるわ!!」

目から滝のごとき汗を流してシンジにすがりつくリツコ。

「・・・・・・・・・・まったく、非常事態に気楽なものだのう。」

「・・・・・・・女性って極端・・・・・・・・」

太公望とシンジはリツコらの態度に顔を引きつらした。

 


仙界伝封神演義異聞奇譚
来視命縛幻想記

第四回 LCL、酒になる 


 

「・・・・・・・・・所でシンジ君、その・・・・・・・宝貝って言うの?定界珠とか言ったわね。

 科学者の純粋な好奇心からなんだけど・・・・・・・・見せてくれないかしら?」

リツコは興味深々でシンジの手に握られている定界珠を見つめる。

「・・・・・・・・別に良いですけど、ミイラになっても知りませんよ?」

「・・・・・・・・ミイラ?」

首を傾げるリツコ。

シンジは説明が苦手なので自分の後ろに位置している太公望に視線を合わせた。

太公望がその視線に溜息をつく。

「・・・・・・・ふう、仕方が無いのう。

 宝貝と言うのは、仙道にある仙人骨からその力を貰って奇跡を起こす。

 故に普通の人間が持つと、使う使わない以前に触れただけで生気を吸い取られてしまうのだ。

 上級な宝貝になればなるほど当然使われる力も強くなる。

 定界珠は仙桃開発の為に・・・・・・・・・もとい、

 自分の力を確認するために千年がかりで作った傑作と言ってもいい。

 普通の人間が持ったら1分でミイラとなるであろう。」

「・・・・・・・・・だ、そうです。それで良いなら触って見ます?

 多分ちょっと触れただけでさっきのお肌に逆戻りですよ?」

定界珠をリツコに差し出すシンジ。

「い、いえ、遠慮しておくわ。」

今度はリツコの顔が引きつる番だった。

 

・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

 

「暗いから、足元気をつけて。もうすぐ明かりがつくから。」

真っ暗な闇の中でリツコが警告する。

「真っ黒くろすけ出ておいで〜、で〜ないっとめ〜だまっをほっじくっるぞ〜!」

「・・・・・・・・なんだ?それは?」

「またまた気にしないのが吉です。」

「・・・・・・・・そうか。・・・・・しかし、何故に暗いのだ?」

「ロマンよ。」

太公望の問いにはっきりと言い切るリツコの表情は、

暗闇でも本能で解るほど輝いていたという。

「きっと今にお腹のでっかいフカフカした動物が出てきますよ。」

「ほう?それは楽しみだ。」

「・・・・・・・・・そのパターン、もう止めて・・・・・・・・」

いつも通りの漫才にこめかみを抑えながら溜息をつくミサト。

「「お約束だから。」」

「(こ、この師弟は・・・・・・・・)」

ユニゾンして聞こえるシンジ&太公望の声に、ミサトはますます頭痛を覚えたという。

 

そしてぱっと明るくなる室内。

いきなりの強い光に目をかばいながら何とか前を見るシンジの目には

鬼のような形をした紫の巨人が、

赤い液体に漬かりながら首だけを上に出している様であった。

「・・・・・・・・鬼・・・・・・・・・・鬼なの?」

流石にお気楽モードでのんきしてたシンジもこれには表情を凍りつかせる。

「・・・・・・・・・・この、波動は・・・・・・・・・!!?」

太公望が、目の前にある巨人を大きく目を見開いて睨み付けた。

人類が15年かかって作り上げた汎用人型決戦兵器。

 人造人間EVANGELION(エヴァンゲリオン)。これはその初号機よ。」

それを見上げながらリツコが説明口調で語る。

「・・・・・・これが・・・・・・・・・父さんの仕事か。」

「そうだ。」

シンジの呟きに低い男性の声があたりに響く。

その声の主は、はるか上にあるガラスの奥に立っていた。

 

「・・・・・・・・・久しぶりだな、シンジ。」

威圧感たっぷりでシンジを見下ろす男性。

顎鬚にサングラスと言う気味の悪いその容姿たるや、すでにセクハラの領域に達している。

「・・・・・・・・・・・知り合いか?シンジ。」

「馬鹿言っちゃいけませんよ。

 あんな人の言葉を喋る変態そうなグリズリーと知り合いだったら

 それだけで僕の人格が思いっきり疑われるじゃないですか。」

太公望の問いに全力で否定するシンジ。

「だが向こうは知っているようだがのう?」

「見ればわかるでしょ?ストーカーなんですよ。

 どこかの元祖スポコン野球アニメの主人公の姉さんみたいな。

 うわ〜、嫌だ嫌だ。この甘いマスクを恨んじゃいますよまったく。」

「・・・・・・・・・・どこから来るのだ?その自信は。」

凄い言われようである。

髭メガネはグラサンをずり落としながら右手を握り締めてプルプルしていた。

「・・・・・・・・・・シンジ君、あれは貴方のお父さんの碇ゲンドウよ。」

ミサトが髭メガネ・・・・・・・・ゲンドウに助け舟を出す。

シンジの時が一瞬止まった。

 

・・・・・・・・・そして・・・・・・・・・

 

 

何ですとおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!??

 

 

シンジの絶叫があたりに響いた。

 

 

 

「嘘だ!!絶対に嘘だ!!あんな変態っぽいグリズリーが僕の父さんなんて!!」

「なんと・・・・・・・・・ぜんぜん似ておらぬではないか・・・・・・・・・」

涙を流しながら絶叫するシンジと、ゲンドウの顔を見て生命の神秘をしみじみと感じている太公望。

「・・・・・・・・・・これほどまでにショックを受けるとはね・・・・・・・・・・」

ミサトは自分自身の発言に少なからず後悔した。

 

「・・・・・・・・・・・・ふっ、出撃。」

突然手紙と同じ主語が皆無な日本語で口を開くゲンドウ。

その言葉に、ミサトとリツコは今どんな状況にあるかを思い出した。

「そうだ、使徒のことすっかり忘れてた!!」

右手を左手の平にぽんと打ち付けて大声で告白するミサト。

「・・・・・・・・・・葛城一尉、減棒2ヶ月。」

「NOおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」

ゲンドウの発言にミサトはムンクの叫びのように両手を頬に当てて涙を滝のように流す。

「・・・・・・・・・無様ね。」

リツコはそばでうずくまりながら「えびちゅ〜」とつぶやいているミサトに溜息をついた。

「・・・・・・・・・・零号機は使用不能ですが?」

それでも投げやりながらシナリオを続けるリツコ。

「初号機がある。」

とりあえずシナリオに戻ったことにホッとしながらゲンドウは威圧感たっぷりに口を開いた。

「レイには無理だと思いますが?」

「問題ない。たった今予備が届いた。」

そう言ってゲンドウはいまだショックを受けているシンジのほうを見る。

「シンジ君は素人ですよ?」

「座ってるだけでいい、それ以上望まん。」

そこまで進むと、リツコはシンジのほうを向いた。

「・・・・・・・・シンジ君、そういう訳なのよ。貴方が乗らなかったら世界が滅んでしまうの。

 悪いけど、このEVA初号機に乗ってパッパと表にいるデカブツをやっつけて来てくれないかしら?」

もうホントに投げやりになっているリツコの軽い口調に、シンジが現実に戻ってくる。

「・・・・・・・・・条件が一つだけ。」

「何かしら?」

リツコの問いに、シンジはガバット立ち上がるとゲンドウをビシッと指差した。

「そこの変態髭メガネ仕様外道グリズリー壱号!!

 僕の親を今すぐ止めろ!!今すぐ!!さあ!!さあっ!!」

目に欠陥を血走らせながら半狂乱に叫ぶシンジ。

よっぽどゲンドウの息子と言うのが嫌だったようだ。

「・・・・・・・・・・と、申しておりますが?」

ゲンドウを仰ぐリツコ。

「構わん、とっとと行け。」

シナリオ通りに行かないまでも、

とりあえずシンジを乗せればいいかと考えてるのかすぐにゲンドウは即答した。

こちらも半分投げやりになっている。

そしてミサトは・・・・・・・・・・

「そうよ!!私には仙桃があるじゃないの!!」

といいながら立ち直っていた。

 

「・・・・・・・・・・・とりあえず、操縦の仕方を簡単にレクチャーするからこっちに来てくれる?」

「りょうか〜い。そんじゃあ行って来ます、師父。また後で〜。」

右手を振りながらリツコについていくシンジ。

「・・・・・・・・・・今回はトコトンこの路線で行く気かい。」

シリアスな空気の欠片も流れていない場の空気に太公望は溜息をついた。

 

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

初号機の起動シーケンスが開始される。

太公望は発令所のモニターで、客として招かれていた。

いざという時は齢三千年の鋭い策に頼ってしまおうと言うリツコの他力本願な考えからである。

「所で先輩。」

「何かしら?マヤ。」

凄いスピードでキーをタイピングしながら、オペレーターの一人、息吹マヤがリツコに話し掛ける。

横を向いていてもその正確なタイピングは健在。ブラインドタッチ?何それ?状態である。

「先輩、何かお肌の張りが良くなってます。」

同じ女性としてとても気になる疑問をぶつけるマヤ。

・・・・・・・・・・仕事中に私語は厳禁だと思うが。

「ふふ、シンジ君が魔法を使ってくれたのよ。」

「今、初号機に乗ってる子ですか?」

「ええ。とてもいい子よ。」

そう言いながらリツコはモニターを凝視した。

 

「主電源接続。」

「全回路動力伝達。」

「第二次コンタクト開始。」

オペレーターの報告が響く。

そして、シンジの足元から初号機が漬かっていたのと同じ赤い水がせり上がって来た。

 

「う、うわ!!何ですかこれ!!?」

「LCLよ。それで肺が満たされれば直接酸素を取り込んでくれるわ。」

「そんなことさっきまで言ってなかったじゃないですか!!

 それじゃあこの水はここ全部に満たされちゃうって訳ですか!?」

リツコの言葉に慌てふためくシンジ。

すでにLCLはシンジのお腹のところまで来ている。

「そうよ。何か問題でも?」

「大有りです!!液体はやばい!!凄くやばいんですよおおおおおお!!!」

叫ぶシンジだがその苦労は報われず、LCLはシンジの全身を飲み込んでしまった。

「・・・・・・・・・・そういえば・・・・・・・・・シンジのやつ、仙桃持ったままだったのう。」

太公望が思い出したように呟く。

その途端に、発令所に警報が鳴り響いた。

 

「何!?何事!?」

流石に慌てるリツコ。モニターでは、シンジが息苦しそうにあがいていた。

「先輩!!大変です!!LCLの成分が変化しています!!

 これは・・・・・・・・・・・酒です!!

「なんですって!!?」

なるほど、よく見るとモニターに映るLCLの色は独特な赤ではなく、

無色透明な色をしていた。

「LCL!!緊急排水しなさい!!これではシンジ君が溺れてしまうわ!!」

「ハイ!!・・・・・・・・・・・って、先輩!!LCLの水量が凄い勢いで減っていってます!!」

モニターを見ると、そこには口を大きく開けて酒を飲みまくっているシンジの映像が映っていた。

それにつられ、LCLの量がどんどん減ってゆき、

やがてシンジの頭が上に出るくらいまで水位が低下する。

「ぶはあっ!!」

首を振りながら空気をむさぼるシンジ。

「なんてこと・・・・・・・・!あれだけの量のLCLを・・・・・・・・・」

シンジの乗っているコックピット、エントリープラグはかなり体積が大きい。

満タンの状態から顔が上に出るまでLCLを減らすには、実に体積の半分を飲み干さなくてはならない。

1、2リットルではすまない事はご想像の通りである。

「・・・・・・・・ひっく・・・・・・・やっぱ仙桃の酒はうめえ・・・・・・・・・」

もはや性格ががらりと変わってしまっているほど飲んだシンジ。

「おらぁ!!何してんだよてめえらよぉ!とっとと出しやがれコンチクショー!!」

ついにモニターに向かって怒鳴りだした。

「だ、大丈夫なの?シンジ君・・・・・・・・・・・」

流石にびびっているミサトがシンジに問い掛ける。

「てやんでぃ、酒が怖く道士が出来るかってんだバカやろぉ〜!!」

完璧にへべれけになっている。

「・・・・・・・・・・マヤ、シンクロ率は?」

「・・・・・・・・・50.24%、ハーモニクス0.003%以内です。十分いけます。」

「信じられないわね・・・・・・・・・・・」

流石に顔が引きつっているリツコ。

「んだとぉ!?てめぇオレことは神だろうが何だろうが信じるっつったじゃねえかよチクショーめ!」

どうやら記憶はしっかりしているようだ。

「・・・・・・・・・・・大丈夫だと思う?」

どうしていいか解らず、リツコは太公望へ視線を向ける・・・・・が、

「わしは知ら〜ぬ。」

太公望はどこからか取り出した五右衛門風呂セットで「いい湯ザンス。」と思いっきりくつろいでいた。

「・・・・・・・・・出しちゃって、ミサト。本人もやる気満々のようだし。

 LCLの入れ直しは・・・・・・・・・したら怒られそうね。」

シンジはまだ自分の下半身にあふれている酒を手ですくって飲んでいる。

「・・・・・・・・・・EVANGELION、はっしん。」

ミサトの思いっきりやる気の無い号令が響き、シンジはカパタルトから地上へ飛び出した。

「死なないでよ。どうせ大丈夫だろうけど。」

ミサトは椅子に深く腰掛けて頬杖をつき、退屈そうにモニターを見つめ始めた。

 


 

前々会、次はゲンドウとのトークタイムと書いておきながら出来なかった対面シーン。

やっと出てきました。ストーリーをまとめるのが凄く大変です。

とにかく、約束を破ってしまったことをお詫びします。

さてさて、今回は思いっきりシリアス抜き、ギャグ路線で言って見ましたがどうでしょう?

何かやる気の無い小説って感じがしちゃってます。

やはり眠気眼をこすりつつ書く小説はこんなもんなんですかねえ?

何か連載をいっぱい持っているのでものすごく忙しいのです。自業自得ですけど。

とりあえず、今日もへっぽこになってしまったこの小説への感想、お待ちしております。

以上、アンギルでした。

 


 

謎のトラブルにより一時期見えなくなってました,すみません。

だって、アンギルさんの第四話のファイルだけアップロードできなくなるんですよ!

他はできるのに。…おまけにフロッピーディスクに文章の半分だけ記憶が残ってる。

…全部だったらまだ、私の勘違いのミスだと思うのですが、半分となると…。

と、言うわけで後書きが大きく変更されてしまいました。

だって、もう前の後書き覚えてないから(爆)

…そういえばリツコの科学理論もお肌の若返りにはかなわないとか言ってたような。

アンギルさんの作品はご自身のホームページであるWing of Seraphimで読めます。

 


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