第11話「スパイ交渉」

信長が戦略自衛隊のスパイとなると言う発言に元帥長井は正直驚いた。だが、これはあの秘密組織NERVを探る願ってもないチャンスだ。NERVは戦略自衛隊には嫌われている。

「そいつはいいですね。喜んで承諾しましょう。金は億単位で用意しますよ。」

「金はどうでも言い。ただそのかわり、そっちは一切指示を俺に出すな。持って来る情報が不満ならいつ解雇してもらってもかまわん。」

信長の口調はいつも通りの長井を部下として話すものに変わってきている。戦略自衛隊は誰もきずいていなかったが、この会見はNERVの諜報部によって盗聴されている。

盗聴について信長は10中、8,9やっているだろうと読んでいた。しかし信長はお構いなくこの話しを切り出したのだ。今、利用価値のある俺を殺したりはしないという自信があった。

信長がこんなことを言ったのは少しでも情報網を増やすためである。そうすれば、あるいは、あの使徒戦に対しなぜか絶対的な自信を持っているゲンドウ達の情報が少しはひっかかるかも知れない。

「わかりました。金は手柄しだいで適当にお渡ししますよ。」

長井はこれにはさすがに不満はあったが、まあ信長さんの好きにさせた方が、いい情報が入って来るかもしれないというのも頭の片隅には合った。だからこそ、信長の条件をのんだのだ。

NERVが戦略自衛隊に嫌われているのは、色々あるが、特に使徒戦への秘密主義が大きな原因であった。第4使徒、第5使徒のサンプルなどまったく特別法を盾に見せようともしない。

情報公開法を利用して、NERVに資料の提出を認めさせたが・・・、NERVが公表したのは黒練り文書、大事な部分がまったく見えなくなっている。

これでは、提出しないより、反感をあおってしまう。さらに、対使徒戦で正規のプロの軍隊が、学者上がりの半軍事組織に負けているという嫉妬心がそれに拍車を掛けていた。

さすがにこういう状態を続けると、恐ろしいしっぺ返しが来るのを信長は昔の経験でよく知っていた。スパイになって、戦略自衛隊に情報を流そうとしているのはそのへんの事も考慮したためでもある。

この会議の日の翌日、今日は学校でシンジの進路相談らしく俺も濃と一緒についていく事にした。しかし、シンジの奴は立場場、一生NERVに否応なく関わっていかなければいけない可能性が高い。

だから、シンジがせっかく自分の人生プランを決め手も、挑戦する事もなく、挫折さぜるを得ないかもしれない。そう思うと、なんだかこんなことをやるのは酷な気がする。

・・・シンジが中学を卒業するころになっても使徒が攻めてくるなら、シンジはNERVによって高校も決められてしまうだろう。いや一応就職できる歳にはなるのだから、それすら怪しいな。

・・・しかし、この頃、隣のミサトがよく家に来る。目的はシンジと濃の料理だ。食費なしでいい物食って、飲んで帰れるからな。そういや、前あいつの家で食べた料理・・・飢え死にしそうだったとき食った土壁より不味いと断言できる。

まあ、この前碇指令を調べているとき、ミサトの事もついでに調べてみたんだが、あいつが南極の葛城隊の唯一の生き残りだと言う事がわかった。

葛城隊・・・2000年に南極であの使徒を調べた部隊だ。しかしミサトは当時14歳。親の仕事にしても、普通そんなとこまで一緒に行かないと思うんだが・・・。

両親は離婚するだのしないだのでもめていたらしく、ミサトは母親よりで、父親の事はよく思ってなかったそうだ。しかし、最後に父親は自分の命を捨てて、ミサトに緊急カプセルでなんとか生き延びさせようとしたらしい。

そして、日本に流れ着いてから彼女は失語症に陥ったらしい。どっかの組織が大事な証人と言う事で監禁してたそうだ。もっとも当時14歳だった彼女は優秀なカウンセラーによって言葉を取り戻しても、南極で起きた事は何も知らなかったようだ。

カウンセラーか・・・、この世界に来たばかりにあったあのカウンセラーの事を思い出すぜ。もう名前も忘れちまったが、今でも元気にやってのかな?

まあ、そんな事も影響して、ミサトは一人だとけっこう寂しいので家に来るのかもしれないな・・・いや、でも絶対、食事の方が主な理由だろうが。

それから言葉を取り戻した後は、べらべらブランクを取り戻すようによくしゃべったらしい。そういや俺に対して、濃以外で、ああもよくペラペラしゃべるのはあいつぐらいだ。

そんなこと思ってたら、朝メシまで家に食いに来やがった。しかもビール飲んでやがる・・・なんてやつだ。いくら酒豪の俺でも朝からは飲まんぞさすがに。

「シンジ君、やっぱり日本人の朝は、ご飯と味噌汁とビールよね。これから毎日食べさせてもらうわ。うれしいでしょ、人に自分が作ったもの食べてもらえるって。」

「・・・・・・。」

あきれて俺もシンジも濃も、うんともすんとも言えない。だいたいご飯に味噌汁なんて、そうそう食えなかったぞ日本人は。大名だった俺でもな。まあ、それは時代が違うにしてもビールは論外だな・・・。

ふう〜、やっと帰っていったぞ。しかし上司の家に来る時にぼさぼさ頭のパジャマ姿とは、いつ見ても恐れ入る。しかも俺は当然男なんだが、胸元まで開いて・・・。

ピーピーピー、携帯電話かかってきたな、やけに朝早くからだが誰からの電話だ。

「はい、佐藤信長ですが、ああアンタ(加持)か。で、またいい情報でもみつけてくれたのか?」

「10日後に、アスカ(弐号機パイロット)が船でそちらに来る事になりました。飛行機じゃないのはEVAの機体を輸送する為です。信長さんも司令命令でわれわれを迎えにくることになるそうですよ。私も本職はアスカの護衛ですのでね。日本に帰る事になりました。」

「そうか、やっと来るか。あんたも来るとは面白い。あんたはNERV本部諜報部に編入されることになるわけか。でも、電話を掛けてきたのはそれだけの用件じゃないだろ?」

「・・・さすがですね。実はNERVの上にゼーレと言う謎の組織があることが判明しました。表向きはNERVは国連から予算が出ていますが、本当はこのゼーレから出てる金が出てるみたいなんですよ。碇司令はこのゼーレに従って行動しているようです。」

「しかし、あの碇司令がそんなぺこぺこ従うとはとても思えんが。」

「俺もたぶん表向きだけだと思います。むしろうまく利用するつもりではないかと。あと、このゼーレがなにやら巨大な計画を立ててるんですよ。かんじんの中身がさっぱりわからないんですが。あと、NERV上層部の秘密文書によると、使徒は全部で17体か18体らしいんですが・・・。根拠はまったくわかりません。」

「もしかすると、そのゼーレかNERVあたりがバイオテクノロジー技術を駆使して使徒の襲来を仕組んでいるかもしれんな・・・。しかし、矛盾が多いし、数まで決まってるのは不自然だな。さて、またいい情報を仕入れてくれよ。」

いったいどういう事なんだ。わけがわからん、加持が嘘の報告をしている可能性もあるが、あいつは大金には興味がないらしい・・・となるとそんな事をするメリットもないはずだ。その情報が間違っていても、あいつの腕ならもっと手っ取り早く稼ぐ方法はいっぱいあるだろう。

電話の俺の声を驚いて濃とシンジが聞いていたが、俺は何も隠すことなくそのまま事実を二人に伝えた。濃は絶対話さないだろうし、シンジもまあ無口な方なので大丈夫だろう。

特にシンジは聞いておいた方が今後のためになることもあるかもしれん。まあすでに電波を盗聴されてる可能性もあるしな。

シンジの進路相談は午後からなので、朝はいつも通り出勤する。いつも通りと言っても夜勤なんかでけっこう時間帯がばらばらなんだが。俺は冬月副指令の部屋をたずねることにした。要請したい事があったからだ。

「諜報部の連中5人を信長君が選んで、直結の部下にして欲しいか・・・。まあ使徒戦の時細かい仕事をさせる為ならかまわんだろう。ただ、一応、出張中の碇(司令)のやつには話し通さなくてはいかんから、ちょっと時間がかかるがかまわんね。」

「もちろんです。お願いいたします。」

俺がこんな提案をしたのは、まあ冬月副指令の言っていた使徒戦の細かい仕事をさせると言うのも嘘ではないが・・・、加持リョウジを直結の部下にするためだ。

あいつはなんとしても手元においておきたい。・・・依頼を頼んだときはまさか、これほどの情報をこれだけのスピードで持ってきてくれるとは思わなかった。はっきり言って捨て駒のつもりだったんだが。

(加持を紹介した)酒井の奴もいい目を持っていやがる。

その後はいつも通り嫌いな事務の仕事なんかを済ませて、昼飯食って濃と学校に行った。しかし俺達二人の姿に生徒は変な目で見ていやがった。

「誰あの美人、えっ、ケンスケ、碇の保護者だって。なんだぁ、碇ってあんな美人に保護されてんのか。」

「しかし隣にいる恐い顔の男はなんなんだよ。えっ、あの人の夫?・・・にあわねぇ。なんであんな美人な人とおっかない顔の人が。」

しっかり聞こえてるぞ。ぶっ殺したくなってきやがった。いや、昔の俺だったら間違いなく打ち首してるぞ。でもこの拳で半殺しぐらいにはしてやるからな。


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