…信長は、一億の大金を戦略自衛隊に支払い、霧島マナをＮＥＲＶに引き抜きして職員として正式に採用した。…プロ野球の世界で言えば金銭トレードである。そのトレードが無事に終了した日の夜。
「…アスカ、そう言うわけで、今日から元スパイのこの霧島マナもこのマンション…俺達の部屋ので住む事になった、今までみたいに喧嘩しないで仲良くやれ」
「本当ですか、信長さん！？…あ、ありがとうございます」
前の世界では死んでしまったマナが、これからも自分とすぐ近くで暮らせることになり、うれしさのあまりシンジは涙を流してしまった。
「シンジ君……。あっ、またよろしくお願いしますアスカさん」
信長は霧島マナを右隣の４０４号室で住ませる事にした。…しかしそれにアスカが同意するはずも無かった。当然だ、元とは言え自分達のスパイだと言う事を知りながら命を助けた上、近くで住ませるなど聞いた事もない。
「納得が行きません！どうしてこのスパイ女を始末しないんですか？」
「…そう言うなアスカ。…マナは生きるために仕方なくスパイやってたんだ。…本当は普通の女の子の生活がしたいんだよ」
「だからって…」
「上司命令だ！いい加減にしとけ惣流・アスカ・ラングレー」
信長の最後の言葉には明らかに殺気がこもっていた。…あまりの恐ろしさにアスカはおびえて、なにも言い返せなくなってしまった。…信長のカリスマがあるからできる事で、ミサトなら、こう簡単にはいかないだろう。
…それから、２週間後のＮＥＲＶ本部。職員がパニック状態で忙しく歩き回っていた。…シンジの未来で経験した通り、アメリカのＮＥＲＶ第２支部が消滅したのだ。
「…信長さん、これが現在の第２支部の映像です」
日向がそう言ってモニターを信長に見せたが…、もはやそこに第２支部が…いや建物のあった形跡はなったく無かった。…なんとその消滅した場所は半径８９ＫＭにもおよぶとの事。
「で、原因は？」
「ドイツで修復した、Ｓ２機関の搭載実験の事故だと思われます…ただ、中東のウサマ・ビン・ラディンが実験が失敗するように工作を仕掛けたと言う未確認情報も流れていまして」
「ほう、アフガニスタンのウサマ・ビン・ラディンが。…確かにＳ２機関は危険な未知の兵器。…本当に微妙な事が実験の成否を分ける…。第２支部のコンピューターに実験中に突然、異常でも起こせば実験は失敗するだろうな」
「確かにその可能性はありますね…」
「あっ、たった今ニュースが。…アメリカ政府が公式にウサマ・ビン・ラディンが今回の謎の爆発事件の首謀者が原因である可能性があるとの事」
信長の作戦の第一段階はとりあえず成功したようだ。…第１３使徒戦が終わった後、その作戦は第２段階に入る予定だと加持には言ってあった。それから事故処理もせずに作戦部長室戻る信長。そこには待ち合わせの約束をしていた，シンジがいた。
「おう、シンジ。…おまえが言ってた通り第２支部が消滅したぞ」
「そうですか…。いったい何人死んだんでしょうか？」
「さあなぁ。なにせ半径８９ＫＭの消失だからな。…少なくとも８０００人は死んだんじゃねぇか」
「…それで第１３使徒の事なんですけど、前も話した通り３号機が使徒に乗っ取られるんです。…なんとか３号機を廃棄処分にできませんか？…そうすればトウジの命も…」
「無理だな…。今回４号機の事故がわかってても止められなかったのと同じだ。俺に廃棄処分をする権限なんてないよ。…仮にあったところで周りが納得するわけないだろ？」
「じゃあ、また僕にトウジを殺されるところを黙ってみてろと！？」
「…ふっ。未来が分かってるんだ。…３号機パイロットを救って第１３使徒を無事に殲滅する策ぐらいとっくに考えてある」
「えっ！…本当ですか？」
「ああ。具体的な作戦は、…………」
…そしてその第１３使徒戦当日。信長の元に松代で行なわれていた３号機の起動実験が失敗した事と使徒が出現したとの情報が入ってくる。すかさずＥＶＡを出撃させる信長。
夕日の中から現れたＥＶＡ４号機は第１３使徒に乗っ取られていた…。その光景を見てあぜんとなるアスカ。レイも驚きの表情で目が見開いている。…シンジは驚いたフリをしている。
「よし、３人ともよく聞け。ＥＶＡの布陣は空から落ちて来る第１０使徒と同じ位置にした。合図と同じに３機一気に使徒に突っ込め。…目標はあの３号機パイロットがいるエントリープラグを引き抜く事だ」
…案外単純な作戦だ。ひょっとすると前回の人生のシンジの実力では失敗した作戦かもしれない。だが、今のシンジなら成功確率はかなり高いと信長は踏んでいた。
「エントリープラグを引き抜いた後は、初号機に陽電子砲を打ってもらう。…ヤシマ作戦に使った時のパワーアップ版だ。…頼んだぞシンジ」
「はい」
「よし、では作戦を開始する。作戦１０秒前、９、８、７、６、５、……………スタート！」
信長の合図で一斉に作戦が開始される。ＥＶＡ３機の配置は使徒を三角形状に囲んでいる。同時に使徒に攻めこめば、もし1機が倒されても、残りの２機が背後から迫ってくるため、どう見ても使徒は攻撃を避けられなくなる。
「ＥＶＡ３機一斉攻撃を開始。…弐号機、使徒の攻撃により中破。…シンクロ率１０％低下」
「初号機、作戦通り、三号機のエントリープラグを引き抜きました」
（…うまくいった。…あとはネオ陽電子砲が第１３使徒に通用するかどうかだな…）
「よし、ＥＶＡ３機、一時使徒の近くから撤退しろ。…これよりネオ陽電子砲作戦に移る」
ＮＥＲＶではすでに陽電子砲の電力は充電してある。…作戦に充電が間に合ったのは、信長が戦略自衛隊に金で頼んでいつでも充電できる体勢を作った成果だった。
シンジはエントリープラグを撤退口に置くと、それと交換に武器庫から陽電子砲を受け取る。ダメージを受けた弐号機はＮＥＲＶ本部に撤退して修理をさせ、零号機を防御役に初号機の隣に配置させた。
シンジが陽電子砲を構える。…ＮＥＲＶに緊張が高まる。…撤退命令を出されたアスカは悔しそうにモニターを見ている。…歴史を変え始める時が来た。
「シンジ、準備はいいな」
「はい」
「よし、では行くぞ。……陽電子砲発射！」
（これで、勝ったな…）
強烈なビームが使徒に発射される。そのあまりの高速なスピードに…第１３使徒はまったくよけきれる事もできず、無事殲滅された。…歴史ではあれほど苦戦した使徒が信長の策で簡単に事がすんでしまった。参号機パイロットももちろん無事である。
続いて数日後に第14使徒もこのネオ陽電子砲作戦で簡単に殲滅。…これで作戦指揮能力で一気に信用を得た信長は作戦遂行上、実力がなく、足手まといになるためかえて邪魔なトウジを実戦には出さないと断言した。
「信長さん、第１３と第14使徒、簡単に殲滅されてしまいましたねぇ。見ごたえがなかったですよ」
「まぁ、歴史がわかってたからな。問題はアスカが精神汚染される次だろうな。…話しは変わって、加持いよいよ例の計画を実行するぞ」
「…ついにやりますか。…本当はこんな事やりたくないですけど、仕方ありませんな。…サードインパクトが防ぐためには」
「そう言う事だ。…明日の夜９：００作戦を実行する」
…そして次ぎの日作戦は予定通り実行された。ウサマ・ビン・ラディンによる第２次巨大テロ作戦である。…無論、真相は信長が仕組んだ事なのだが。
アメリカ、イギリス、フランス、スペイン、ドイツ、オーストリア、中国……特に欧米を中心とする地域の飛行場やスタジアム等にテロを行なった飛行機で突っ込ませたのである。…アメリカに至っては突っ込まれたのは１０ヶ所もあり、その中にはなんとホワイト・ハウスも含まれていた。
…実はセカンドインパクト後、あまりの人手不足と実力の無さに戦略自衛隊は一兵卒に限り日本国籍を持たずとも入隊を許可するようになった。…今回の作戦は信長がこれを有効に利用したものだ。
信長はこの日のために、家族の一生の安全を保障して、自殺志願者を戦略自衛隊の中東系の外国人に限り募ったのだ。本当は家族には戦死したと言う連絡がつたえられるだけで何も保証金など出ないのだが。…おまけに作戦を拒否したものはすべて暗殺された。
現在、ニュースで各国のＴＶでテロ事件の現場が流されていた。…あまりの残酷さにマヤなどは意識を失いかけたほどだ。…リツコの一言でなんとか立ち直り、言われたと通り、作戦部長である信長に連絡を取る。…まさかその信長が今回の事件の首謀者であるとは知らずに。
「もしもし、信長さん。…緊急事態です、今すぐＮＥＲＶ本部に」
「ああわかった。…大変な事になってしまったな」
ぬけぬけとそう答える信長。…信長の演技はそう簡単には見破れない。信長はマヤの連絡を受けすぐにＮＥＲＶ本部の司令室に向かうのだった。
「…各政府から推定死者数の報告が。少なくともアメリカが２００００、イギリスが５０００、トルコも５０００……今回の一連のテロによる死者数は全世界で少なくとも１０万人以上になる計算です」
「今回の事件であのウサマ・ビン・ラディン犯行声明を発表しました。…これを受け、アメリカ政府は報復攻撃をする可能性が高くなってきました」
…信長の顔が一瞬、ニヤッとなった。…そう信長はこのアメリカの報復攻撃のみを目当てに今回の作戦を起こしたのである。ゼーレは加持の報告によればアフガニスタンに潜んでいる。
…ならばそのアフガニスタンさえ叩けば人類補完計画どころではなくなり、うまくいけばその計画を起こした老人達も死んでくれるだろう。…いくらサードインパクトを止めるためとは言え、あまりにも恐ろしい信長の謀略であった。