第9話「綾波レイのデータ」

「レイ、学校はどうだ。シンジとはうまくやってるのか。」

「問題ありません。佐藤作戦部長。」

・・・相変わらず人見知りの激しい子だ。俺の専属スパイになった加持からこの綾波とゲンドウに秘密の関係がある可能性が大だと言う情報を貰って、さっそく俺からも調べてみたんだが本人に聞いてもやっぱダメだな。

NERVの彼女のデータは性別と年齢以外何もかも不明の文字で埋め尽くされている。綿密な個人情報を収拾しなければ気の済まないNERVの性質から見てこれは絶対におかしい。

現に彼女以外のすべてのNERV職員には非常に細かいデータが乗せられている。それに司令がレイにだけ見せるあの優しさ・・・。加持の情報に間違いはない。

昨日もレイは司令と他愛もない世間話をしていた。そして、レイは微笑していた。あの事務的でなにごとにもまったく表情を変化させない彼女が・・・。

おかげでシンジの奴がすっかり落ちこんじまった。息子の自分でさえそっけない態度しか取らないのに、レイに対してあんなに入れこんでるんだからもっともだな。

そういえば、俺の母は、わがままで腕白小僧だった俺を憎んで、弟の信行に肩入れしていたな。始めてだな・・・シンジと俺の共通点を見つけたのは・・・。

家に帰ると俺はそのことを濃に相談して見た。俺はワンマンだが、昔から自分が納得した部下の意見はどんどん取り入れていた。納得しない意見はどんな重臣であろうと絶対却下したがな。

「なるほど、レイちゃんと司令はそんな風なの。女同士で話せばなにかわかるかもしれないわ。私は今日夜勤だから、さっそく今から確かめに行ってくるわ。」

さっそくレイに話しに行く濃。彼女は長年、信長に使えていたので、物事を早急にやらなければ、気が済まない癖が完全に移ってしまっているのである。

「ね、レイちゃん、あなた学校でスキな子とかいないの?」

「いません。」

「じゃ、レイちゃんの趣味とかは。いつもエヴァのことばっかりじゃ、疲れちゃうわよ。たまには息抜きしたら?」

「それは命令ですか?命令なら従います。」

なるほどね・・・。さすがにあの恐い信長の怒りを買わず50年間、戦国の世を生きぬいた女性だ。レイが人との関わりが嫌いなのではなく、知らないだけなのにすぐに気づいた。

「レイちゃん・・・、これから人に積極的に話しをするようにしなさい。これは佐藤作戦部長と私からの命令よ。」

「了解しました。」

命令と言えばレイは必死に従おうとするだろう。そうきっかけはなんでもかまわない。濃はレイに豊かな感情を手に入れて欲しかった。今まで彼女がつらい人生でそんなものが身につける余裕がなかったのは容易に想像がついた。

それから、夫婦で一緒に家に帰る事ができた3日後、このことを信長に報告した。加持の件以外はシンジにも大体の事情は話した。

信長はなるほどという顔を終始していた。やはり男の自分にはそこらへんの女の細かい感情はわかりにくい。濃に頼んで正解だったようだ。早速、翌日信長もレイに声を掛けてみる。

「レイ、お前はなんでEVAに乗っているんだ。」

「絆ですから。・・・私とみんなとの。」

なるほど、EVAでしか人との関わりがないってわけか。もしかするとシンジも同じなのかもしれんな。さて、今日はエヴァ零号機の起動実験だったな。

「がんばれよ、起動実験。」

「はい、わかりました。佐藤作戦部長。」

零号機の起動実験が始まった。はっきり行って作戦部の俺にはやる事がないから暇だった。記録が残っていない・・・、レイの過去とはどんなものだったのだろう?

零号機の実験は結局うまく行った。シンクロ率は41.3%。ほぼシンジと同程度だ。まあ、今までのできからすればかなり上出来だろうな。

「パターン青、使徒出現しました。このスピードですと、すぐNERV本部近くに出現します。」

使徒の出現、零号機は修復が完全にされておらず、碇指令の判断で出撃はしない事になった。敵はどんどん包囲網を突破。ついに第3包囲網も突破される。

シンジが急いでプラグスーツに着替え、エヴァに搭乗した。シンクロ、その他数字に異常なし、出撃準備は完了した。

「シンジ君行くわよ。エヴァ初号機発っ・・・」

「待て!ミサト急ぐな。敵の分析が完了していない。マヤ、初号機のダミーバルーンを出せ。」

「りょ、了解。ダミーバルーンを地上に出します。」

ミサトより信長の方が権限は上である。マヤは信長の迫力もあって、躊躇せずにバルーン発進ボタンのスイッチを押した。するとバルーンにビームが浴びせられる。

ビームはしばらくして姿を消した。バルーンは破裂したのではなく、完全にこの世から溶けてしまっている。

「あれは陽電子ビーム。・・・この数字、初号機を出してたら間違いなくやられてたわ。」

リツコが震えた声で口に出した言葉は正しかった。もしも信長が初号機の発進を止めなかったら、今ごろNERVは初号機を失い、急遽出撃した零号機もやられ、サードインパクトが起きていたかもしれない。

ここは一旦シンジをNERVに呼び戻し、新しい作戦を立てる事にした。ゲンドウ、冬月、リツコ、信長、ミサトの五人で通常は作戦を立てるが、信長の要望でパイロットも作戦会議に加わる事になった。

実際に戦っているのはシンジ達だ・・・。外から見ているだけの俺達にはわからないことがきっとある。信長は昔から現場の意見にはちゃんと耳を傾けてから物事を判断している。これについては他のメンバーも反対しなかった。

この席でミサトはヤシマ作戦を立てた。これはまず、戦略自衛隊から陽電子砲と陽電子ビーム対策の盾を徴発。シンクロ率の高い初号機で陽電子砲を撃ち使徒を破ると言うものだった。防御は零号機に任せる。

「俺もその作戦でだいたい良い思うが、攻守は反対にしたい。どうせあの二人のシンクロ率はそう大差ない。だからあの射撃の下手なシンジよりレイをオフェンスにした方がいいと思うんだが。シンジは、ATフィールドが強いからディフェンスにむいてると思うしな。」

結局、指令の判断で信長の策を採用し、ヤシマ作戦がスタートされることになった。零号機を使って戦略自衛隊からNERV本部へと装備品を持っていく。

「でも、信長さん。使徒をつらねくには最低一億八千万キロワット入りますよ・・・いったいどうやって、これだけの大電力を集めるつもりなんですか?」

メガネを掛けた若いNERVのオペレーター日向マコトが心配して尋ねる。・・・実は彼は信長のことをけっこう尊敬していた。自分よりたった1つ歳上なだけなのに(本当は違うが)、信長の地位は遥か自分より上である。

それでも妬ましい嫉妬が起きない理由・・・。それはニつある。一つは能力だ。信長の戦闘能力は諜報部ですら足元にも及ばないし、先ほどの使徒戦の見ても作戦を立てる切れのよも抜群のようだ。

あの時、信長以外は誰も敵の遠距離攻撃の可能性に気づかず、あのまま出撃するのを当然だと思っていたのである。

もう一つは、部下と一緒に下の仕事をする事である。ミサトなど上の連中は、自分たち、部下に勝手に仕事を押し付けてしまう。

まあミサトの場合は度が過ぎるのだが。だが、信長は自分から進んで地味で嫌な仕事をてきぱきこなす。

実はこの辺は信長が狙ってやっていることだ。今の自分は世間には25歳の若くて超キャリア組の男として、認識されている。

それは自分よりはるか年上の部下も持つ事になり、当然、<若いくせに生意気なやつめ>とにらまれる事になる。

こうなってしまうと、いざという時、自分の命令を適当にさぼる部下が出はじめ、そこから出るだらけた雰囲気が、サードインパクトの間接的な原因にもなりかねない。

だから、彼は部下の信頼を得るため四苦八苦して色々考えているのだ。まして過去に部下の光秀に裏切られ自分は一度死んでしまったのだから。

「一部の病院などの設備を除く、日本中からだ。」

「・・・信長さんらしい大胆な策ですね。」

「作戦を立てたのはミサトだ。俺はちょっと修正しただけだ。」

実のところ、信長もミサトに言われる前からヤシマ作戦は思いついていた。たまたま作戦会議の時に、ミサトに先に言われただけである。

その夜、エヴァや装備品の点検も終了し、第五使徒戦が始まろうとしていた。


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