第4話 「生意気」

-2015年 6月29日  9:05 NERV作戦室−



 ドイツから日本に来たアスカが引っ越す場所をどうするか作戦室でもめていた。

 「だから、家事とか食事とかもちゃんと出すから…」

 「…嫌、絶対に嫌よ。ずっ〜と、NERVで缶詰だなんて」

 …NERV本部内の独身寮にアスカの部屋が用意してあったのだが…

 アスカはこれを強硬に拒否している。

 まぁ、俺も気持ちはわかるがな…。

 まだまだ、遊び盛りの女の子…こんなところで一日中ってのはねぇ。



 「じゃあ、ミサトの家にする?…シンジ君もいる事だし…。引き取っても構わないでしょミサト?」

 「なによリツコ!…嫌よ、あのバカと一緒に住むだなんて!」

 さっそくバカあつかいされてるよシンジ君…バカシンジと呼ばれる日も近いな。

 「でも、私も忙しいしね。マヤはどう?…女同士だし」

 「だめですよ、先輩。…私も仕事、仕事でほとんど家に帰れないんですから」

 …確かにマヤはリツコに便利屋って言う事で、結構忙しいそうだからな…

 「そ、そうだわ。…ここに一人暇人がいたわね、神戸二尉♪」

 …なんだよミサトその目は!

 俺だって男なんだ…アスカが受けいるわけがない。

 引き取った時には、初日からアスカパンチで致命的ダメージを受けるのは目に見えている。

 「待て、ミサトさん…俺だって仕事ありますし、だいたい女の子と一緒に住むわけには…」

 「義父親になればいいのよ♪…アスカは義母親さんしかいないんだし…」

 そういう手もあるのか…だったら引き取っても…って、やっぱアスカに殺されるよ俺。

 「とにかくダメですよ!…俺に父親だなんて、できません!」

 「私だって嫌よ、ミサト!…若い男と一緒に住むんじゃ、いつ襲われる事か」

 やっぱり、はやくも暴漢扱いされ始めているぞ…。

 …でも、ある意味、実際に襲われるのは、ひ弱な俺の方な気がする…。

 「アスカ、こいつ以外にNERVで暇な職員なんか一人もいないの…嫌なら、やっぱりNERV本部で暮らす事になるけど…」

 「…仕方ないわね、わかったわ」



 …アスカは本当に渋々…といった感じで了承した。

 …よっぽど、NERV本部内には暮らしたくなかったのだろう。

 「じゃぁ、アスカ。ちゃんと神戸ニ尉にあいさつして」

 「…惣流・アスカ・ラングレーです。これからよろしくお願いします」

 …言葉遣いは一見、とても丁寧だが、実際にはめちゃくちゃ、むっとした表情と声を故意に出してるぞ…。

 はぁ〜、こんな暴力女と一緒に住んで…命が持つのか俺?



-2015年 6月29日 18:30 新国道42号−



 去年免許を取って、ようやく初心者マークのはずれた車でアスカを助手席に乗せて運転をする俺。

 「まさか、アスカと一緒に暮らす事になるなんてね」

 「それは、お互い様よ!…くれぐれもお風呂とか覗き見したらどうなるか、わかってるでしょうねぇ」

 一応、大人の俺に向かって、どこまで失礼な事、言いやがるんだこの女。

 まったく、これからどうなる事やら…。

 「それに、とろとろ運転してるんじゃないわよ。90Kmぐらい出しなさいよね!」

 「…この道は制限時速40Kmだぞ!」

 「あんたバカ?…そんなもん、無視して走ればいいのよ!」

 今度は人の事をバカ扱いか!

 くそっ…なんで、こんな生意気な女と暮らさなきゃいけないんだ。



-2015年 6月29日 18:45 神戸宅−



 なんだか疲れた…自宅のマンションに着き、ドアを空ける俺。

 ちなみに、このフロアの2階下に葛城の部屋がある。

 「狭い部屋ね…まるで豚小屋みたい…あ〜あ」

 おい…確かに欧米に比べれば狭いかもしれない。

 だがこれは、俺がホームレス生活の末、ようやく借りられたマンションなんだ。

 それを豚小屋とは…あまりにも失礼だ。



 「!…いったい、なによこのカメ!…空、飛んでるわよ」

 「ああ、俺の家族の一員のたまちゃんだ、よろしくな」

 …さすがに空飛ぶカメとはアスカも驚いたようだ…たまちゃんがプラカードを出して字を書く。

 『みゅう』

 「か、カメが…。カメが字を書いてるわ…。し、信じられない」

 ホームレス時代にむつみさんという同世代の女性からもらったカメだ。

 …なんでもこの子の親に大量に子供がうまれて、引き取り先に困って俺を訪ねたのだという。

 俺がその内、この一匹だけを引き取ったのだ。

 「こいつはお風呂が大好きでね…今日はもう疲れただろ?…一緒に入ってこいアスカ」

 「お、お風呂が好き?…いったいなんなのよ、このカメは」

 …どうやら、たまちゃんに驚いて、俺に対して『覗くな!』と言う余裕もなかったようだ。

 さすが、たまちゃんだな…俺も始めて会った時はめちゃくちゃ驚いたから。



 アスカが風呂に入ると俺はようやく一休みできる事になった。

 …まったく、生意気でわがままで本当に疲れる女だ。

 まぁ、こうして落ち着いてコーヒーを飲んで…ゆっくり考えると彼女を引き取れたのは幸運かもしれない。

 …これでエヴァパイロットへの干渉が多少なりともできるしな。

 しかし、この同居で親しくなるどころか…ますます、仲が悪化しそうな気が…。

 俺が加持一尉みたいにカッコよかったら問題ないんだけどな…。

 …今度、アスカとうまく付き合える方法を聞いてみなくちゃな。



 アスカがたまちゃんと一緒に風呂から出てきた。

 2人(?)ともすっか打ち解けたようで…やはり、たまちゃんは凄いカメである。

 「ひとし、このカメって本当に凄いのね。…人間の言葉もわかってるみたい」

 「ああ、亀語が分かれば会話もできる」

 「か、亀語、そんなのがあるの?…あんた分かるの?」

 「まっ、多少はな」

 これは事実で…元の飼い主であるむつみさんに教えてもらったのだ。



 せっかくアスカが日本来たので、記念に携帯で寿司の出前を取って、部屋で待つ俺達。

 「ところで、アスカ。やっぱりエヴァパイロットとしての誇りってやつがあるのか、おまえ?」

 「もちろんよ!…私にとって、選ばれたエリート…EVAパイロットであることが最大の誇りなのよ」

 やっぱりそう思ってるんだよな。

 アスカがエヴァパイロットとして選ばれた本当の理由は… 母親が弐号機の中にいてシンクロ可能だからなんだが。

 「プライドか…俺にはよくわからねぇよ」

 「ふん、それは、あんたがクズだからよ」

 …俺は前の世界にいたとき、パソコン以外なにをやっても人より下手な事ばかりだった…今でもそうだが。

 勉強をやれば取る点数は、すべて赤点…スポーツにしても運動神経がなく、50M走はいつもビリ。

 自分自身にプライドだなんて…本当に米粒くらいもないほどだ。

 俺はあまりにもプライドが低すぎるが…アスカはあまりにも高すぎる。



 「じゃあ、次ぎの使徒戦を倒す自信は?」

 「もうバッチリよ。まぁ、見てなさいって、私一人で簡単に倒してみせますよ♪」

 いかん…こりゃ、完全に調子に乗っているぞ。

 アスカは油断大敵って言葉を忘れているらしい…いや、4分の3、ドイツ人だから知らないのか?

 やれやれ…次ぎの使徒戦はどうなる事やら…困ったものだ。



-2015年 7月2日 12:05 NERV食堂−



 …アスカと同居してから3日…そろそろ第7使徒イスラフェルがそろそろ現れるかも知れない…。

 漫画には使徒が現れる日にちまでは書かれていなかったので、俺にもはっきり日付けまでははわからないのだ。

 この戦い、…初戦はエヴァが分裂した使徒の攻撃に敗れた。

 だが、5日後の再戦によってアスカとシンジ君がユニゾン訓練の成果を発揮し、無事使徒を殲滅すると言うものだった。

 そう言えば、俺は新世紀エヴァンゲリオンの漫画の中で、この頃が一番好きで…

 最終回の方は無意味なセリフの繰り返しで…期待外れで失望したものだ。

 偶然、食堂室にシンジ君が来た…一応、次ぎの使徒戦の対策言っておくべきか。



 「おお、シンジ君、シンクロ実験ご苦労さん。…かなり、好調みたいだね」

 「え、ええ・・・。オーバー・ザ・レインボウに言ったときにヘリコプターで会ったとき、以来ですね」

 「実は、ちょっとシンジ君に頼みがあるんだけどさ」

 「あ、はい。なんでしょうか」



 …NERVの上の連中に俺が使徒の事を知っている事がばれたら殺されてしまうので

 ストレートに『使徒が分裂するから、気をつけろ』・・・とは言えない。

 なぜ、使徒に対して油断している本人のアスカではなくシンジ君に言ったと言えば…

 俺の忠告など、アスカはまったく聞き耳を持たないであろう事が、目に見えているからである。

 それに…アスカはかなり鋭いようなので、そんなタイミングバッチリな忠告をすれば・・・

 俺が未来を知っている事に感づく可能性も否定できないのだ…。

 第7使徒イスラフェルが来たのは、それから3日後の事であった。



-2015年 7月5日 14:10 NERV作戦管制室−



 「先の戦闘によって第3新東京市の迎撃システムは大きなダメージを受け、現在までの復旧率は26%…実戦における稼動率はほぼ0%と言ってもよいわ」

 …現れた第7使徒イスラフェル…ミサトさんは迎撃システムがほとんど起動しない事をかなり気にしている。

 だけど、あれってまったく役にたってないんだよな…今までも、この後も。

 「だから、今回は上陸直後の目標を水際でイッキに叩く!初号機と弐号機は交互に目標に対して波状攻撃、接近戦で行くわよ!」

 「了解」

 …新世紀エヴァンゲリオンの本での自分のセリフと…ほとんど同じ事を言うミサト…最後のアスカとシンジ君の返事も同じだ。

 「あーあー、せっかくのデビュー戦だってのに、どうして私一人、まかしてくれないのかしらねぇ」

 「調子に乗りすぎだ、アスカ。…ちゃんとやれ」

 「へいへい、わかったわよひとし……ああ、それにしても二人がかりなんて、卑怯でヤダな。…趣味じゃない」

 …ダメだ、これから見事に負けて帰ってくるって言うのに。

 やっぱり…アスカは俺の忠告なんて、まったく聞いてくれない…しかも、また呼び捨てにしやがって。



 サバァ〜ン、と水しぶきを上げて姿を現す第7使徒イスラフェル。

 戦闘地形は海の浜辺…セカンドインパクトで海面が上昇した事により、沈んだビルがごろごろ見られる。

 使徒の体は一応人型に違いが…体の色は紫と黒が多く…顔もない。

 体の真ん中にコア…使徒の生命活動の源である部分がはっきり見えるのも特徴だ。 

 「先頭は私に任せて。…シンジはちゃんと援護してね」

 エヴァ初号機と弐号機は同時に出撃…2体同時に進撃し、途中で二手に別れ、初号機はバレットガンで攻撃する。

 「初号機バレットガンを発射。…全弾命中しました」

 次ぎにアスカがすかさず、ソニック・ブレイブで攻撃を仕掛ける…剣道で言う上段の構えからの攻撃で…凄まじい威力がある。

 「弐号機の攻撃で使徒切断」

 …確かに使徒は見事に真っ二つになっているが…これから使徒は分裂して、さらに厄介になるのだ。

 「よくやったわ、アスカ」

 「どう、シンジ。戦いは常に無駄なく美しくよ」

 「…アスカ!まだ動いてる」

 アスカと違って、シンジ君は俺の忠告をちゃんと聞いてくれたようで、勝利にうかれているNERV職員の中で唯一ちゃんと使徒の事を見ていたようだ。

 「切断された使徒が活動を開始…使徒が2体になりました」



 …エヴァ二機はものの見事に使徒になげられ、特に弐号機は田んぼのなかで逆さになると言う屈辱的な負け方をするのであった…

 その後、エヴァはゲージに収容され、戦略自衛隊がN2爆弾を投下…

 使徒はそのダメージで一時的に上陸を諦めストップ…再活動までは6日間かかるとのMAGIの予想であった。



後書き

 結局ユニゾン訓練も突入せずに終わったな第4話。

 ところでPS2『シーマン』買ったんだけど、今だにシーマンと会えないんです…ああ、シーマンと早く会話がしたいな…。

 ところで全然、感想メール来てない…首をキリンにして、待ってます。
 


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