復讐の神子

            弐の章

 「お父さん・・・・この人達は?」
 入ってきた少女が尋ねる。
 「・・・それではこれで」
 そう言ったシンが退出するより早くセイジが答える。
 「お前のお兄さんでシンという。隣にいるのが妻のレナさんだよ、ユイ」
 セイジの言葉にユイと青年は驚愕し、シンとレナは立ち止まった。
 「お兄・・・・ちゃん?この人が?」
 ユイの言葉に頷くセイジ。
 「そうじゃ。儂ももう歳じゃからな。
  こやつに碇財閥を継いでもらおうと思って呼んだんじゃ」
 セイジの言葉に驚いたシンは言う。
 「父さん。俺は今まで放浪していた身。
  それに、碇家のことは全てユイに譲ると言っておいたはずだが」
 シンジの言葉に不敵に笑うセイジ。
 「こうでもせねばお主はまた何処へと旅立つであろう?」
 セイジの言葉を聞き、突如として目に涙を浮かべるユイ。
 「お兄ちゃん!折角会えたんだよ!!何処かになんて行かないでよ!!
  お兄ちゃん!!!」
 ユイの言葉と行動にさすがに驚きを隠せないシン。
 ユイの隣にいた青年も言う。
 「そんな事があるわけ無いじゃないですか。
  そうでしょ?シンさん」
 青年の言葉に返すシン
 「その通りだ。・・・・しかし、君の名前はなんという?」
 シンの言葉に思い出したように言う青年。
 「申し遅れました。私の名は六分儀ゲンドウ。
  ユイさんと親しいお付き合いをさせていただいている者です」
 青年・・・ゲンドウの言葉に頷くユイ。
 「そうなの。この人が私の彼の六分儀ゲンドウさん。
  とっても可愛いんだよ」
 ユイの言葉に苦笑しつつ答えるシンジ。
 ・・・・・しかしゲンドウの何処が可愛いのだろうか。
 「お前が満足なら何も言わんよ。だが、もう少し気をつけた方が良いな二人共。
  ・・・腐りきった『ゼーレ』の死に損ない共がお前達を狙っている」
 シンは驚く三人を後目に言葉を続ける。
 「さて俺の可愛い部下の報告を聞くとしよう。
  『ミカエル』『メタトロン』外の様子は?」
 シンの言葉に金色の長髪に蒼い瞳、ワインレッドの戦装束と鋼の胸当てを身につけ、
 左の腰に輝く真紅の玉のついた鍔を持つ西洋の剣を携えて、
 両の耳に白銀の玉石を模したアクセサリーをした女性と、
  真紅に燃ゆる短髪に黒の衣を纏い、龍を模した柄尻の太刀を携え、
 両の耳に紫銀の玉石を模したアクセサリーを身につけた男性が現れた。
 「報告を聞こう」
 シンの言葉に口を開く女性。
 「我等が至高の玉座の王よ。『ハミエル』よりの連絡でございます。
  『ゼーレ』の愚か者共がこの館を貴方様がおられるのに包囲しました故、
  処分をしておいたとの事です」
 男も言う。
 「我等が真王(おう)よ。『ガブリエル』より連絡が届きました。
  『ゼーレ』の死に損ないのうち、三人を処分したとの事です。
  つきましては他の者の処分をどうするか尋ねてきておりますが如何致しましょう」
 それを聞き、シンが答える。
 「分かった。『ミカエル』よ。『ハミエル』には引き続き、
  蛆虫退治をするよう伝えよ。
  『メタトロン』。お前は『ガブリエル』に蛆虫共の親玉に伝えるように言っておけ。
  『二度と碇家及び我が部隊に手を出そうと思うな。
   次は例外なく滅してくれる。
   我が名ルシファーにかけて・・・』とな」
 シンの言葉に一礼して消える二人。
 ユイとゲンドウは震えている。
 ・・・・心なしかゲンドウの顔が青く、大分冷や汗が流れているようだが。
 「ま・まさか貴方があの『漆黒の神子・ルシファー』だったとは・・・・。
  ということは、そ・其方があの『純白の巫女・パンドラ』と呼ばれる方ですか?」   ゲンドウの言葉にゆっくりと頷くシン。
 震えるゲンドウを見てシンは口を開こうとするが、
 「素晴らしい!!貴方達の協力さえあればあの『ゼーレ』すらも撃ち破れる!!
  どうか!!我々にご協力をお願いします!!!」
 ゲンドウの言葉に不意を突かれる形となったシンとレナ。
 なおも続けるゲンドウ。
 「貴方達がご協力くだされば『ゼーレ』の独りよがりの計画『人類補完計画』を
  潰すことが可能となるのです!!
  あの計画は自らを神とするために他者を死に陥れる魔の計画です!!
  人類の未来の為にもどうかお願いします!!」
 最後の方は涙声になって土下座までするゲンドウ。
 それを見てシンは言う。
 「顔をあげると良い。俺達は最初から碇家当主碇セイジ殿に協力をしている。
  そして今まであの腐った蛆虫の『ゼーレ』を潰す為に俺達は戦ってきた」
 シンからは穏和な笑顔が消え去り、
 大魔皇を・・・・いや、死神を連想させる顔が浮かんできた。
  「俺は『ルシファー』。全てを闇に染め、全てを滅する者。
  如何に腐りきった『ゼーレ』の屑でさえ、我が前にひれ伏す」
 言い終わったシンの右腕を優しく包むレナ。
 「・・・・シン。その様な意地悪はせずとも良いでしょう。
  皆さん、ごめんなさいね。私達は今まで戦ばかりでしたから、
  あまり人と会う機会がなかったの。
  特にシンは、私と織天使(セラフ)級の者達にしか会おうとしませんから」
 笑いながらシンの非礼を謝るレナ。
 ・・・・・彼女のようなのを良妻というんだろうな。
 レナの言葉に、笑うセイジ。
 「いやいやかまわんて。シンの今までの人生を聞いて分かったよ。
  あれほどまでに波乱に満ちた・・・・
  いや、死に微笑まれた生ならば人を嫌うも道理というものじゃ」
 セイジの言葉に口を開くユイ。
 「・・・・お兄ちゃんがどんな人生を歩んできたか知らないけど、
  希望を捨てちゃだめだよ。お兄ちゃんを必要とする人達が居るんだから」
 ユイの純粋な笑みを見て、少し影のある笑みを浮かべるシン。
 「・・・・・考えておく。今日はこれで失礼する。
  俺には色々せねばならぬ事もあるからな」
 そう言うと部屋を出ていくシン。
 レナも慌てて後を追う。
  「それでは皆様。また後日お会い致しましょう」
 優雅に礼をして出ていくレナ。

 此処より始まったのだ。
 この世で最初の反逆者と彼に協力する者達の神への反逆が・・・・。


   後書き

 どもレンでございます。
 今回は碇家との対談を書いてみました。
 因みに、『シン』はこの世界とは切り離された存在。
 つまりシンジとは多少異なる存在として覚えていただければ宜しいかと。
 さらに、今後とも出演する九大熾天使は私の偏見と独断による姿・性格です。
 ですから、こんなのは信じないように。
 では、また後日お会いいたしましょう。







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 トマトのコメント

 昔からの西洋の話しが、かなり絡んできそうな気配ですね。
 私は世界史には疎いのでそこらへんはあまりわかりませんが。
 ユイが「お兄ちゃん」ですか。
 このあたりかなり、TV本編とは異なってるようです。 

 ・・・掲載が私の都合で遅れてしまいました。すみません。

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