闇と福音を告げる者

第2話「事務処理とこれから」







使徒襲来翌日

使徒戦闘跡地

ビルの上に黒髪で短く刈ったボサボサ頭の男と紫の髪をきれいに撫で付けた男が使徒が自爆した跡地を見下ろしていた。

二人とも似たようなデザインのスーツを着ている。ただ左胸ポケットのボタンがそれぞれ星座のレリーフに成っている。

黒髪の男が銃、銀髪の男がコウモリをそれぞれ刻み込んでいる。

「でもよ、連城の大将は一体どういうつもりだ最高レベルの5までのサポート許可して出番なしかよ。なあ藤原」

黒髪の男が銀髪の藤原と呼んだ男と会話している。

「でもね、何事も無くてよかったんじゃないかな。シンジ君も無事みたいだしキョウジ君ももう少し楽に考えようよ」

藤原が黒髪のキョウジに答える。この葛葉キョウジ、藤原正也の二人は法夜配下の魔道省のハンターである。

「それでだ大将に言われた解析用のサンプルはどうだなった」

「それなら“コウモリ”達に取らせて優さんの所に送ってあるから大丈夫さ。それより今夜だろ集合がかかったのは」

「そうだな、場所はバー『魔壁』かホテル『椿館』のどちらからしいな。それじゃ大将の所のでも行くかな」

「そうだね。久しぶりにシンジ君の顔もみたいしね」

二人が談笑しながらビルの中に入っていく。

後には赤い水晶のような破片が散らばっていた。







ネルフ某所

六人の男達が円卓を囲み議論を交わしている。しかしよく見るとときたま男達の姿が微妙にブレる。

六人中五人がフォログラフであり遠方から映像を送っているのである。

『これが初号機の力かね。予想以上だよ君』

『いや、機体の性能だけでなくパイロットの本来の力もあるのだろう。どうなんだ碇君』

それぞれが初号機と使徒との戦闘データをみて険しい表情をしている。

「問題ありません。シナリオの修正範囲内です。しかし、彼の『イレギュラー』の件は・・・」

『それに関して私から言おう』

いままで沈黙を保っていたバイザーを付けた議長役の男が答える。

『現在、『ラビリンス』の中心体であるオリュンポスは我らが掌握した。従って行動するとしても日本のみだ』

「分かりました。計画も予定道理です。後は予算の増加もお願いします」

『しかし、使徒襲来時の被害では予定より少ないはずだが』

「兵装ビル等の完成を急ぐためです。このままでは埒があきませんのでよろしく一考願います」

『分かった考えておこう。では後は委員会の仕事だな』

『ごくろうだったな、碇君』

次々に男が消えていき最後にゲンドウと議長が残った。

『碇、残された時間は後僅かだ。裏切るなよ』

そう言うと議長も消えていった。一人残されたゲンドウがポツリとつぶやいた。

「分かっている。私に残された時間は後僅かだという事わな」

そういうとゲンドウも消え何も無い真っ暗な空間が残された。







爆心地処理場

防護服にみを包んだ人間たちが様々な計器類をもって情報収集を行っている。

その一角のプレハブではミサトとリツコが話していた。

「ふう、暑いったらありゃしない。それでリツコなにか分かったの」

「いいえ何も。見事に細胞の一片まで燃焼済みでサンプルになるような物は無し。それよりミサト、シンジ君の診断の結果が着たわ」

「それで、本人だったの」

「そうよ。100%DNA鑑定の結果本人だわ」

そう言ってミサトに机の上にあるファイルを渡し項目を示す。

「それじゃあ、あのも本人がやったての。ただの中学生が!」

「あなたシンジ君の書類読んでないでしょ。彼の保護者は連城法夜。何か気づかないの」

「それなのよね。連城てどっかで聞いた名前なのに思い出せないのよ」

「呆れたわね。彼、連城財団の総帥よ。そして『ラビリンス』の理事でもあるの。それに戦自にも何かと顔が効くみたいね・・・」

「なっ『ラビリンス』て言ったらネルフと並ぶ特殊機関じゃない。それに戦自がなんで出て来るのよ。でも理事てことは相当できるの・・・」

「あそこは実力がすべてだから半端なんじゃすぐ死ぬらしいわね」

「でもあそこってウチ以上になにやってるのか分からないんじゃない。マギでもわからなんでしょ」

「ええ。マギでも突破できないセキュリティなんて馬鹿げてるわ!」

そう言うとプレハブの脇の机にあるコーヒーメーカーから二人分のコーヒーを注いでカップをミサトに渡した。

「とにかくシンジ君の眼が覚めるのを待っていろいろ聞きましょう」

そうリツコがいうと携帯が震えて着信を教えた。そしてリツコが電話を取った。

「ええ・・・そう・・・わかったわ。ミサトと一緒に行くからそのままでね。(携帯を切る)ミサト、シンジ君が目覚めたそうよ。あなたも来て」

「はいはい、わかったわよ。でもあの連城さんもいるんでしょうから色々聞かせてもらいましょ」

気楽にミサトが答えて二人ともプレハブをあとにする。

余談だが最初ミサトが運転していた車が本部到着のときにはリツコが運転していたのは謎とされた。

(そのとき後部座席でミサトは薬で眠っていたらしい(汗;))









病室

病院の服に着替えたベッドに寝ているシンジと相変わらずのマントにスーツ姿でベッドの近くに座ったの法夜が談笑していた。

「まったくお義父さんも心配性なんだから。あの程度なら僕一人でも充分だったのに・・・」

「なに言ってる。そのおかげであのナツミとか言う女の子が助かったんだろ」

昨日の葛葉達が出した報告書をシンジに見せる。

「それはそうですけどキョウジさん達が見つかったらどうするつもりだったんですか」

「そのときはその時でなんとかする。だから無茶は絶対するな」

「はい」

「それとアレは俺からあの髭に叩き着けとく。あの技は意外と疲れるゆっくり休め」

そう言うとシンジに笑いかけ寝るように促し待合室に出た。

(いつまでも無茶をする。自立心旺盛なのはかまわんがもう少し頼って欲しいものだな)

そう思いながら待合室の長椅子に座り昨夜の戦闘を思い出し瞑目する。





〜回想〜

シンジが初号機に乗り込みLCLが注ぎ込まれる。

「この赤い水なんですか?」

さして驚きもせずモニターに映るリツコに質問した。

「だいじょうぶよ。LCLと言ってさっき説明したシンクロの補助をしてくれるの吸い込んで肺までいっぱいになれば酸素も供給してくれるわ」

「そうですか」

そういっているうちにハーモニクスや双方向回路の調整がなされていく。

「シンクロスタートします。シンクロ率・・・100%です!」

オペレーターの伊吹マヤがリツコに報告した。その顔は信じられないといっていた。

「なによ。シンクロ率は高い方が良いんじゃないの」

御気楽ミサトが何も分かっていないのに口を挟む。

「こんな事理論的にありえないのよ!今日来たばかりの何のデータもない・・・」

「失礼だがぐずぐずしていると上の街がさらに危険に晒されるのだが、それともここにいる人間さえ無事なら他はどうでもいいのかな」

ミサト達と共に来た法夜がイライラして意見した。

法夜は本来、自分が守るべきものが戦うことをとても嫌う。それは自分の力が及ばない所為の証の他ならない。

対してミサトとリツコも返す言葉がなくすぐに次の指示を飛ばす。

(まったくここは無能者の集まりか。葛葉や藤原もまだ来ていないしどうしたものかな)

サポートに二人を使おうと考えていたがまだ到着していないのでヤキモキし始めた。

「あの連城さん。もう少し落ち着いてください」

見かねてミサトが法夜に言葉をかける。

「余裕ですな。とても十四歳の子供を乗せて戦場に送り出すとは思えませんね」

「そんな事は分かっています!(なによ優しく声をかければ!)」

そういうと正面モニターに顔を戻した。

(使えん上に感情的ときたか指揮官としても三流か?)

こんな時でも相手を挑発し見定めている。意外と喰えない奴だ。

「二人ともいいかげんにしてくれる。もう発進態勢が整ったのよ。後は作戦部の出番よ」

「それなら赤木博士この後少し話がしたいのですが。できれば二人きりでね」

さっきまでのイライラが嘘のように真剣な眼差しでリツコに問い掛ける。

「あら意外と平気なのね。さっきまでが嘘のようね」

呆れたように法夜を見返すリツコ。

「あっちはシンジを信頼しているから大丈夫だろ。イライラしていたのは事実だが何もできないのが歯がゆいだけさ。それで返事は?」

法夜が人好きのする微笑みを向けるとリツコもやや頬を上気させ「後で研究室に来れば良いわ」と素っ気無くいいマヤの方に近づいていった。

「エヴァンゲリオン初号機発進!」

そんなやり取りをしている間にカタパルトからエヴァが発進された。







地上

地上に射出されたエヴァが使徒の目の前に現れる。

使徒もいきなり現れた自分と同じ大きさの物体に戸惑うようで様子を見ようとしている。

「シンジ君、まず歩くことだけを考えて」

「はあ」

「よし、エヴァンゲリオン初号機リフトオフ」

それを合図に背中の最終拘束具が外れ前のめりの姿勢で歩き始めた。

発令所では所員たちが動いたとはしゃいでいるのが通信機を通して聞こえてきた。

シンジは呆れて物が言えない。(まったく動くか分からない物に乗せないで欲しいね)

「あの〜盛り上がっている所申し訳ないんですが・・・。これに武器はないんでしょうか」

それでも仕方なく発令所に今後の指示を仰ぐ。

『ゴメンなさい。まだ肩に装備されたナイフしかないのよ』

申し訳なさそうにリツコが答える。

「そうですかコレって自分が思った通りに動くんですよね」

『ええシンクロ率が100%だからほぼ自分の感覚と同じはずよ』

「そうですか。なら勝手にやらせてもらいます」

『ちょっと何勝手言ってるのよ!私の指示に・・・』

リツコとの話にミサトが割り込んできたため通信機を切った。

「さてと、本物かどうか確かめさせてもらいますか」

そういうと眼を細めて相手を見定め肩からナイフを出し構える。

「行くよ!」

自分に気合を入れるため大きな声を出し動かし始めた。

使徒も自分に敵意を向けた相手に怪光線の攻撃を浴びせる。

使徒の目が光誰もがエヴァに当たると思った。

だが、爆発音の後にエヴァが居た場所には何も居なかった。

使徒がエヴァを探そうと動こうとした時使徒が大きく仰け反った。

いつの間にか後ろに現れたエヴァに背中を大きく切り裂かれたのだ。

使徒にさらに攻撃を加えようとすると目の前に八角形の赤い壁が現れ使徒に近づくのを遮る。

「何なんだこれ」

シンジが構わず再度攻撃を加えても同じく近づく事ができない。

『やっと通じたわね。シンジ君、それがさっき話したATフィールドよ』

「これがですか!ならどうすればいいんです。これじゃどうしようもないんですけど」

『それは・・・』

無理に回線を繋げたはいいが明確な指示ができないリツコに見かねて法夜が口を出す。

『シンジ、それはおそらくアレと同じだ。そういえば対処方は分かるだろ』

そう言うと意味深な笑いを向けシンジも納得した顔で頷いた。

「そうですかそれなら分かります」

『あとやっと準備が整った。それとその近くで一人怪我人を収容したそうだ今度から気をつけろ』

しっかりクギをさしシンジもすいませんといって再び通信を切った。

「さて今度は気をつけるとして本気でいきます!」

改めて気合を入れ直しナイフを構える。

するとナイフが光を纏い始め日本刀の形を作る。

そして使徒に駆け寄り一気に袈裟懸けに斬り下ろす。

使徒も先ほどと同じようにATフィールドを展開するが今度はフィールドごと斬られた。

さらに今度はその切り口から炎を上がり使徒を包み込む。

たまらず暴れようとする使徒をエヴァがコアを突き刺し仕留める。

「幻夢流降魔剣・炎龍」

そうつぶやき構えを解くと刀がナイフに戻る。

そして使徒が完全に灰になるのを見届け戻って行った。





その後、ケージに帰ったきたシンジをリツコとミサトの質問と文句が出迎え「疲れているのだから休ませたらどうだ」と法夜がケージに現れるまで続いた。

結局、病院に一泊検査入院することになり待っている姫たちに詫び言を法夜が伝える事になった。







現在・病院

「あのすいませんが連城さんシンジくんは・・」

ミサトがリツコと連れ立って瞑目している法夜に声を掛けた。

「今寝かせたところだ。ところでリツコ、昨日はすまないな無理言ったのに行けなかった」

「別に構わないわ。それより今朝司令に面会を予約したってほんと?」

「ああ碇老、つまりシンジの祖父さんに頼まれて渡す物がある」

ミサトを無視し二人で話を進める。

当然、面白くないミサトは顔には出さないが気分を害していた。

(なんなのよこの男。人が下手にでりゃいい気になって!)

「それと葛城一尉」

「は、はい。なんでしょう」

悪態をついていた所を急に呼ばれたため生返事になっていた。

「昨日の説明で使徒がこれからもココに来るのは分かった。シンジもパイロットになるのを承知した。だがあの指揮では任せられん」

「どういうことですか!」

いきなり無能といわれ激昂するミサトだが法夜はまるで関知しないように続ける。

「その感情の激発さらに昨夜の戦闘での能天気ぶり、私に言わせてもらえれば三流以下だ。

だからシンジも『あなたの指揮の従えない』といっている」

「感情のことはともかく能天気とはどういうことですか!」

さらに怒り法夜に詰め寄る。

「発令所の引き締めもできんようでなにが指揮官なんだ。昨日の発令所の能天気ぶり忘れたわけではあるまい」

昨夜の事を思い出すミサト。リツコとの言い合いや発令所の浮かれようを思い出し言い返すことができない。

「分かったようだな。では今後の条件を詰めに司令の所に言ってくる。リツコ案内を頼めるか」

「ええ、いいわ。こっちよ」

法夜を案内してリツコも行く。

後には悔しさを顔一杯に表したミサトが残された。







ネルフ総司令室

「司令、連城法夜氏をお連れしました」

「・・・入れ」

リツコが招き入れ法夜が司令室に入る。

正面に執務用の大型ディスクとその隣の方に来客用と思われるソファーと机意外は何も無く、天井にセフィロトが描かれている。

「ほう、天井に『生命の木』とはなかなか。ジプシーに知り合いでもいますかな」

普通ならこの重苦しい雰囲気で威圧されるが何でもないように法夜が軽口を叩く。

「用件はなんだ」

ゲンドウは気にも止めず相変わらずのポーズで切り返す。

「なら用件だけ言おう。シンジがパイロットの件承知した。ただそのかわり条件を呑んでもらう」

「ならば言え」

ゲンドウはシンジが乗るといっているのでいささか安堵したが態度には微塵も表さない。

「なら言わせてもらう。まず使徒一体撃破に付き十億、サポートで半額。

さらにこちらが指定した人物が作戦の指揮を執ること。そしてこれが本題だがシンジの親権放棄それに伴い碇姓の放棄だ」

ニヤリと笑いゲンドウに眼を向ける。

ゲンドウもさっきまでの表情をいささか崩している。

「待ちたまえ。報酬の件な何とかなるが後の二つは・・」

「『神楽』以来ですね、冬月先生。ですが無理ではないでしょう。葛城一尉の無能ぶりは目にあまる。

それに預けて十年も何の音沙汰も無しです。シンジも望んでいる事です。それと姓の件ですが碇老からコレを預かっています」

マントから『絶縁状』と書かれた手紙を出し机の上に置く。

「では確かに。それと冬月先生、筆不精でも年賀状の返事くらいは書いてください。

若菜が心配していましたよ」

「ああ、今度寄らせてもらうよ」

それではといい返事も待たずにさっさと退室した。

後に残された冬月とゲンドウは手紙を読んでいた。

「これでは親権を手放さざるをえまい。どうする碇」

「あの男のことだ。拒否しても根回しは済んでいるのだろう。呑むしかあるまい」

冬月に答えたゲンドウは怒りに震えていた。

残された妻との絆が断ち切られたのだ。

「そうだな。ここで条件を呑んでおいた方が反発も少ないだろう」

「そうだ。シナリオを進める為にもな。だが最後に笑うのは我々だ」

そう自分を納得させ震えを抑える。









だが『イレギュラー』とゲンドウにいわれた者・法夜と駒と思っていた実子・シンジが自らのシナリオにどのように関わっていくのか。

まだこの二人は知らない。









あとがき

どうもカオスです。やっとテレビ版の第2話の初めの方かな?

資格試験も来月にせまり筆もさらに進まない。

だがここでやっと夢にまで見たゲンドウに絶縁状を叩きつけることに成功(^o^)

ゲンドウの不幸はまだ続く予定だがまず本編を進めたいと思います。

それではメール待っています。


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トマトのコメント

どうやらゲンドウがキーマンとなるような気が。ゲンドウはかなり切れる設定のようです。

それにしてもシンジは強い。いきなり100%。

なぜ家はスーパーシンジ君が多いのだろう?

来週は私の都合でEVA2回目と同じくお休みです。

すいません。テストがやば過ぎで・・・。

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