闇と福音を告げる者

第1話「始まりの時が告げられた」







2015年

第二新東京

連城邸

「あらシンジさんにだわ」

青い髪のメイドが郵便受けから封筒を持って屋敷の中に戻った。





シンジの部屋



コンコン

「シンジさん、いらっしゃいますか」

「はーい。どうぞ」

メイドが部屋の中に入った。

部屋の内装はシンプルだが品が感じられる。

特に目を引くのが巨大な本棚だ。

(本の題名は「エノクの書」、「アカシック・レコード」「レゲメントの悪魔」など古今東西の魔道書)

部屋の主たる少年はテラスで本を読んでいた。

「ちょうど良かった。クリスさん、紅茶をお願いできますか」

「はい。それとシンジさんに封筒が届いてましたよ。はいこれ、それでは紅茶を持ってきますね」

クリスが紅茶を淹れに出て行った。

「さてと誰からかな。女の子だと良いな♪」

差出人の名前を見て顔をしかめ封を切った。

「僕を舐めているのかヒゲ爺め」

青筋を立てて部屋を出て行こうとした。

「あら、シンジさん紅茶をお持ちしましたけど・・」

「あっそれならお義父さんの部屋にお願いします。これから相談しに行くので」

「はい。旦那様の分もカップを持って行きますので行っていてください」

二人は部屋を出て行った。









法夜の部屋





シンジの部屋と違いカウンターバーやキングサイズのベットや同じ位の大きさの本棚があるが

ジュウタンに書かれた巨大な魔法陣が一番印象深い。

「で、どうしたシンジ」

「これを見て下さい」

封筒の中身を確認した法夜が苦笑して返した。

紅茶のカップに口を浸けた。

「いい気なもんだな。お前の実父はただ『来い』とだけ書くとはな。

それにこの女はなんだ『ここに注目』だあ。フザケルのもたいがいにしてほしいものだ」

「すいません。こんなのが実父で」

「気にするな。子供は親を選べんのだ。それでどうしたい?」

「文句を言いに行ってきます。場合によってはブッ飛ばしますが」

「それなら私も行こう。京都で『橋姫』やなんやらの結界の点検と晶のコンサートがあるしな。

それにお前はマユミちゃんに会いに行けばいいだろうな」

「なんで山岸さんが出てくるんです」

顔を真っ赤にして反論した。

「なんだ碇老の薦めの見合いしたじゃないか。それで気に入ったんで婚約して・・・。

もしかしてシンジ、今さら気に入らないなんてことは無いよな。あんな良い娘は今時いないぞ」

「そんなんじゃないよ!」

「それじゃなんだ・・・。あそっかなるほど。愛しい人との逢瀬。邪魔するほど野暮じゃあないさ」

シンジの背中をバシッと叩きニッと笑った。

たいしてシンジは顔を真っ赤にして俯いていた。

「純情だな。だがな、シンジこれだけは約束しろ。絶対に俺のようになるなよ」

そう言うとシンジの背後に掛かっている『赤髪の麗人』と題された絵をどこか遠い目で見詰めた。

「はい、お義父さん」

うって変わって真剣な顔つきで頷き返した。

「いい面構えだ。それじゃ行くかな姫君達に会いに」

「はい、お義父さん」







三日後



第三新東京行きリニア内

『特別非常事態宣言が発令されました。これより当リニアは最寄の駅に停車します』

駅に止まりシェルターに急いで向かう乗客をしりめに二人の男がゆっくりと降り立った。

一人は紺のスーツと水色のYシャツを着て黒マントを羽織って前を大きく開いていた。

もう一人中学生と思わしい服装で白の開襟シャツと黒い学生ズボンを履いていた。

言わずと知れたシンジと法夜である。

「どうしたんだまったく。まだ二駅もあるというのに・・。戦自が何かやっているのか」

「お義父さんどうしますか。歩きますか」

「待て、今戦自の橋本一将に聞いてみる」

マントから携帯を取り出しコールした。

「あ、どうも連城だ。今第三の近くに居るんだが一体どうした。

何・・ウン・・ウン・・。分かったこちらでもやってみる。じゃあな」

「なんだったんですか」

「ああ『使徒』なんてふざけた名前の訳分からんもんが第三に近づいているそうだ。

最悪N2を使うんですぐ逃げろだとよ。それと魔道省のほうに連絡してコッチ関連の線がないか調べて欲しいそうだ」

「それじゃ歩きながら連絡しましょう。ここもN2が使われると危険でしょ」

「そうでもないがとにかく行くか」

二人とも駅の構内を出て町に繰り出した。









街中





山向こうから異形が現れた『水』を司るサキエルである。

「あれが使徒ね。魔道省の方に聞いてみますか」

携帯でまた連絡を着けた。

「ああ、俺だ。人界課の葛葉と魔界課のフェ・・いや藤原に連絡して第三を監視させろ。

そう、直ぐにだ。じゃあなまた、流星でも身にいこうぜ優」

「優さんだったんですか今の」

「ああ、晶に会いに行くんであまり面白くないらしい。それより迎えが来たぞアレだ」

暴走したように車が猛スピードで突っ込んできて止まった。

その中から黒いスーツを着てサングラスをかけた女が顔を出した。

「碇シンジ君ね。それと・・」

「シンジの保護者の連城だ。京都に行く用事があってここまで一緒に来たんだ」

「そうですか。それならシンジ君は後ろに、連城さんは助手席にお願いします」

「分かった。シンジ乗れ」

「はい」

二人を乗せるとすぐまた猛スピードでその場を離れた。

山にさしかかる頃にUNが交代を始めた。

「どうやらN2を使うようだな」

「なんですって!」

「心配ありませんよ、葛城さん。お義父さんお願いします」

「ああっ分かってる」

軽く答えるとマントから一枚の『符』を取り出した。

「障壁となれ。風神『風障壁』」

呪文を唱え窓から符を放り出した。

その瞬間、使徒が閃光に包まれた。











ネルフ



発令所

「どうだ我々の誇るN2兵器の威力は」

「これで勝負は着いたな」

先ほどまで通常兵器をいくら叩き込んでもビクともせず焦っていたが、最後の手段のN2兵器の威力を見て落ち着きを取り戻した。

「まだ粒子が乱れていて確認できません。もうしばらくお待ちください」

オペレーターが答え回線を調整しだした。

「どうせあの爆発だ。確認するまでもあるまい」

さっきと違い悠然としている戦自の将校たちだが、オペレーターの報告でまた事態が変わった。

「爆心地にエネルギー確認。映像回復します」

爆心地の様子が正面モニターに映し出される。

爆心地中央部にサキエルがいくらかダメージを与えられたがほぼ無傷でそこにいた。

「そんなバカな!」

「おのれ、化け物め!」

悪態と歯軋りをしながら将校達はモニターをにらみつける。

司令塔の下で髭を生やした男と白髪の初老の男が会話している。

「やはりN2でもA・Tフィールドでほとんど効かんようだな」

「ああ・・・。所詮奴らはこの程度だ。見ろ、上層部から連絡が来たようだ」

司令塔の上の方でなにやら電話がかかってきた。

終わると将校達が全員降りてきて髭の男の前に並んだ。

「碇君、作戦の指揮権が君に移った」

「分かりました」

バカにしたようにサングラスをクイッとあげ、口元に僅かな笑みを浮かべた。

その態度に怒った将校の一人が怒鳴った。

「確かに我々の兵器が効かんのは認めよう。だがな、君に何とかできるのかね!」

「その為のネルフです」

平然と言い返した男の顔は『無能者め』と相手を蔑んでいた。

「そうか。それならお手並み拝見と行こう。お前等行くぞ」

将校の中でも高齢の男が他の者達を促しその場を去った。

(先ほど怒鳴った将校は顔中真っ赤にしてさらに怒っていた)

「さてUNは御退散だ。総員、第1種戦闘態勢。さて、碇、どうする」

白髪の男が碇と呼ばれた髭の男に重々しく問う。

「初号機を使う」

碇が逆に何でもないように答えた。

「だが、レイは使えんぞ」

「問題ない。もう直ぐ予備が届く」

白髪の男が苦虫を噛んだような表情で問い返した。

「ユイ君がこの事を知ったらどんな顔をするかな」

「問題ない、冬月」

それを横目に司令塔に碇が登っていった。

「奴は相変わらずか。シンジ君に期待するか。『帝(ミカド)』の下で育った『福音』を操るものか・・・」

苦笑を一つすると冬月も司令塔に登っていった。









ネルフ近くの山中





シンジ達が乗った車は無傷で走っていた。

「それじゃあ電話かけてる間にこれ読んでいてね」

そういって極秘と赤文字で書かれた厚いファイルを渡した。

そして携帯を取り出すとどこかに掛けた。

「これ極秘って書いてあるのに見ていいのかな」

「な〜に、うちや他の省庁にも似たようなものがあるんだ。気にしない」

二人で放しているうちにミサトの電話が終わった。

「でもどうやってN2の爆風をあんな紙切れ一枚で防いだんですか」

法夜に顔を向けさっきの説明を求めた。

「どうってこと無いよ、あんな事はね。それより前を向いて運転していただけるかな、葛城さん。

こんな所で死ぬなんてのは不本意なのでね」

「あ、はい」

ミサトは前に向き直ったが先ほどの風景を思い出していた。

N2の爆風が来る瞬間放り出された符が風のドームを形成し爆風が内側に入ってくるのを防いだ。

(あれがどうってこと無いわけないわね。この人って何者なの!シンジ君の保護者っていうけど・・。

こんなことなら報告書ちゃんと読んでおくんだったわ)

ミサトが一人考えている時にシンジも考えていた。

(お義父さんアレ久しぶりに見たな。あれで最下級の呪符っていうんだから呆れるな)

二人が結構失礼なことを考えている間にトンネルの中に入っていった。







カートレイン





トンネルにはいってカートレインに乗り数分が過ぎた。

「そういえばまだID見せてもらってないわね。同封してあったはずだけどみせてくれる」

「はい、これですよね」

ポケットから封筒を取り出しミサトに渡した。

「この手紙も見ても良いかしら?」

「良いですよそんなもの」

そっけなく返してファイルをまだ見ている。

「それじゃ見せてもらうわ(久しぶりに父親に会うのに反応がかんばしくないわね。

まっ十年もほったらかしにしてたんだからしかたないかもしれないけど・・・)」

それからしばらくしてトンネルの向こうに光が見え、トンネルを抜けた。

「ここがジオフロントか。本当にあったんだな」

「ええっここが最後の人類の砦です」

「そうか」

ミサトが誇らしく言うのに対して、法夜もシンジも大した事が無いように窓から下の景色を眺めていた。

(なんなのよこの反応の無さは!)

場違いな怒りをミサトが抱いている間に停車場に着いた。









ネルフ内通路





「おかしいな。ここで良いはずなんだけどな・・・」

「迷いましたね」

「多分な。記憶が確かならここを通るのは三回目のはずだ」

「ハハハ・・・。ちょっと待っててくださいね」

二人がミサトを白い目でみるとミサトもバツが悪そうに直ぐ近くの端末に近寄った。

「まったく本当にここに勤めているのかね」

「そういってもお義父さんも似たような事あるでしょう」

「あそこはな結界が複雑化して入る度に通路が変わるんだ。別に私のせいじゃない」

「でも葛葉さんや藤原さんは迷わないですよ」

「それはだな・・・」

「あのすいませんが迎えが来るのでもう少し待ってください」

「・・・ああっそうか」

不毛な言い争いに呆れ始めたミサトが二人を止めた時、法夜の後ろのエレベーターが開いて金髪で白衣を着た女が出てきた。

「ミサト、何やってるの時間も人手も無い・・・(このマントまさか!)」

「ゴメン、リツコ。あれどうしたの?」

エレベーターの前で固まったリツコに怪訝な顔をして問いただした。

「リツコってまさか赤木リツコなのか!」

法夜が急に後ろを振り返って確認した。

「まさか・・。ほ、法夜なぜあなたが・・」

「それはこっちのセリフだよ。なぜあの時急に・・・」

「あのすいませんがお二人さん。再会を喜びあっているのかわからないけど時間ないんでしょ」

「そうね。法夜話したい事があればあとでね。ところで、あなたが碇シンジくんね。私は技術部の赤木リツコよ」

「はい、赤木さんそうですが。お義父さんとの関係は一体」

「リツコでいいわ。昔、ちょっとね。それよりあなたに見せたい物があるわ。着いて来て」

ささっとエレベーターに乗り込んでこの場を去ろうとした。







ケージ





「真っ暗で何も見えませんね」

「もう直ぐ電気がつくわ」

そうこうしている中に明かりがついた。

巨大な檻を思わせる空間に顔と思われるものが赤い水から現れていた。

「これは顔、ロボットなんですか」

「いいえ、これはエヴァ。人造人間エヴァンゲリオン、その初号機。建造は極秘裏に行われた」

「これも父さん、碇ゲンドウの仕事ですか」

『そうだ。よくきたな、シンジ』

管制室に尊大な態度で見下ろしているゲンドウの姿があった。

「フッ、出撃」

「待ってください。零号機は凍結中。初号機もパイロットが・・・」

「いえ、今予備が届いたわ」

「マジなの」

「碇シンジ君、あなたがこれに乗って使徒と戦うのよ」

勝手に話を進める大人二人にシンジは呆れ返っていた。

(僕の意思も聞かないで勝手に進めて一体何なんだ)

シンジが御立腹なのに対して何の返答もないのでゲンドウがさらに語り始める。

「乗るなら乗れ。さもなくば帰れ」

「それじゃ、帰らせてもらいます。お義父さん、早く京都に行きましょう。あまり遅いと何言われるか分かりませんから」

帰ろうとするシンジに今度はミサトが詰め寄る。

「ここまで何しに来たの、逃げちゃダメよ」

「何しに来たも京都の知人に会いに行くのに寄っただけです。

だいたい誰も彼も高圧的に強制しているだけで人にものを頼む態度じゃないでしょう」

正にその通りなので返す言葉が無いミサト。そこにゲンドウが声を発した。

『もういい、赤木博士。レイで初号機を再起動だ』

「はい、パーソナルデータをレイに書き換えるわ。みんな急いで」

作業員に号令をかけるリツコ。ゲンドウもどこかに連絡している。

「どうやら忙しいらしいですね。戻らせてもらいますよ」

壁に寄り掛かっていた法夜もシンジと一緒に戻ろうとした時、ドアが開き蒼い髪の少女が全身に負傷しながら担架で運ばれてきた。

「この子がこれに乗るんですか」

「ええ、そうよ」

シンジが冷たい声でミサトの問う。ミサトもやや憮然として答えた。

「シンジ、分かっているな」

今まで黙っていい法夜が急にしゃべりだした。

だが、その態度は今までと違いマントと同じ漆黒のオーラを発しているように見える。

「ええ、お義父さん。碇ゲンドウ!」

シンジも似たような雰囲気を纏いゲンドウに怒鳴った。

「お前の言うとりコレに乗ってやる。だが、勘違いするなこの子の為に乗るんだ!リツコさん。これの扱い方教えてください」

またケージ内が慌しくなり、それを確認するとゲンドウは発令所へのエレベーターに乗った。

「おっと、ちょっと待った」

運び出されるレイと呼ばれた少女に法夜が近づいた。

「あなた誰」

「なにあそこにいる子供の付き添いさ。それよりこの傷を何とかしなくちゃな。“癒しの風よこの者に恵みを”」

レイの傷に符を触れ呪文を唱えるとレイの全身を緑の風が包み込んだ。

「これでいい」

符を離すと緑の風も消えなかから傷が消えたレイが現れた。

「・・・・何をしたの?」

「ちょっとした魔術の類さ。さて、シンジの所にでも行くかな。それじゃお大事に」

不思議そうにしているレイを残してさっさとシンジの元に向かう。

後には訳が分からなくなった医師たちが残されていた。

(一体あの人は何)

レイも思考の海に旅立ったようだ。





リツコから細かい説明を受けている時に法夜が近づいてきた。

「シンジ、あの娘は治しておいた。速く戻ってこいよ、彼女たちを待たせると怖いからな」

「はい、お義父さん。でわ、行ってきます」

法夜に笑いながら返事をするとそのままエントリープラグの方に走っていった。

「さて、どうなるかな(万が一の時は俺が出張るしかないな)」

静かに決意を固めミサトの案内で発令所に法夜が向かう。









あとがき

ようやっと試験が終わり書きかけの小説もあがった。

中途半端な終わり方だと思う人もとにかくもうしばらく落ち着くまで待ってください。

次回からマユミさんや法夜の恋人達も幾人か出しますので楽しみにしていてください。

それでは感想メール待っています。

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トマトのコメント

本編再構築物ですね。法夜と言う人物が謎ですが。

この人物の存在がいることで、シンジが本編よりかなり変わっているようです。

第2話から、法夜の恋人達が気になるとこです。

では、また来週お会いしましょう。   

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