闇と福音を伝える者

第五話「月光」後編







ネルフ・病室

先ほど使徒の加粒子砲を浴び集中治療室に運ばれたが法夜とリサが駆けつけ個室に移させた。

そして今はレイに施したと同じ符を使っての治療を施している。

符を使いながら後ろにいるリツコに話し掛ける。

「それで、どうしてこうなったんだ。」

「ミサトが威力偵察の前にエヴァを発進させたのよ。そこに使徒が加粒子砲を発射。

ロックボルトも外されていないから身動きがとれず・・・」

「シンジは何も言わなかったのか」

「威力偵察を進言したけど・・・。ミサトも意地になってたみたいで・・・」

「呆れたね〜。なっちゃいないと思ってたけどここまで酷いとは・・・。ホウヤ、この件引き受けよ」

「貴女は・・・。」

「リサ・メッカーノ。国連軍広域作戦部隊『ノルン』大佐さ。

ここの作戦部があまりにも不甲斐ないんで私達にお鉢が回ってきたってわけさ」

「・・・法夜。それじゃあミサトはどうなるの」

「俺はこの前の戦闘で次は無いとあの女に言った。それが舌の根も乾かぬ内にこの失態だ。

本来ならノルンはアドバイザーとして在籍させようと思っていたが彼女達に全て任せようと思う」

「そう。(仕方ないかもしれないわね。復讐心だけじゃどうしようもないものね。)」

「それじゃあ六分儀司令に挨拶に行こうか。ホウヤ、案内よろしく」

「ああ、リツコ。リサに現在準備できる武器、資材をすべてリストにあげて渡してくれ」

「分かったわ。仕事はしましょう」

少し考え込むようにして法夜が立ち上がる。

「リサ、もう少しかかるからロビーの方で待っててくれ」

「あいよ。はやくしておくれよ。私がいないところで作戦が進むのはしゃくだからね」

リサが退室したのを確認して手を休めてリツコの方に向き直る。

「リツコ、友人は選んだ方がいいぞ」

「法夜、貴方のそれは忠告なのかしら、それとも私への感傷?」

「真剣に聞け!いいかこれは俺の真摯な忠告だ。復讐に身を焦がす者は周りがどうなろうと関係ない。

仇を討った後には被害者と復讐者が残る。お前が被害者になるのは見るに堪えん。それだけだ」

法夜に珍しく怒鳴られ少し驚く。

「分かったわ。私も真摯に聞かせてもらうわ」

そう言ってリツコも退室する。

「復讐か。人の事は言えんな」

苦い顔をしながら法夜は治療に戻った。







ロビー

「待たせたな。行こうか」

「意外と時間がかかったね。それよりあのリツコとかいう博士、なんか深刻な顔して歩いて行ったよ。何をいったんだい」

「復讐者と被害者に対する私見さ。それより司令室に行こう」

「ああ、分かったよ。(まだひきずってるんじゃないだろうね。羨ましいよ、ミネルバ。)」







司令室

ゲンドウ、冬月がいつも道理のポジションにいてミサトが作戦の上申に来ていた。

「では葛城。本気でこの作戦を実行する気かね」

「はい。残された時間でもっと成功率の高い作戦です!」

「反対する理由は無い。やりたまえ」

「はい。ではこれより戦自研に試作自走陽電子砲の徴発に向かいます」

敬礼してミサトが退室する。

冬月がしばし考え込んで話し出す。

「六分儀。本当にあの作戦可能だと思うか」

「マギにもかけたはずだ」

「なるほど、人ではなく機械を信じるか。おまえらしいな」

「・・・・・・。」

沈黙が包む中、内線が入る。

「私だ。・・・そうか。当して構わん」

「どうした。」

「連城法夜が面会を求めてきた」

「彼か。今度は一体なんだ」

「分からん。だが会わねばなるまい」

しばらくして法夜とリサが司令室に入ってくる。

ニヤリと笑って法夜が話し出す。

「彼女が私が指定した人物です」

「国連広域作戦部隊『ノルン』所属、リサ・メカーノ大佐であります」

びしっと敬礼をする。先ほどのミサトの敬礼と比べると格好が決まっている。

「『ノルン』の話は聞かせてもらっている。ヨーロッパ、アフリカ、東南アジアでかなりの活躍らしいな。

だが君達がこっちに来るのに問題はないのかね」

「そうのことですがすでに国連事務総長から了承をもらっています。リサ、書類を」

「これです。後はこちらにサインをしていただければ手続きは完了です」

「六分儀・・・。」

「・・・分かった。許可する」

差し出された書類にサインをする。

「これで結構です。では今回の作戦を説明願います」

「・・・冬月」

「このファイルがさきほど提出された作戦の詳細だ」

「失礼します」

冬月からファイルを受け取ると速読で一気に読み進める。

しばらくして読み終えると呆れた顔で話し出す。

「この作戦は不可能です」

「なぜかね。このネルフの誇るマギでも辛うじてだが可能と出たが」

ファイルの一点を指して説明を始める。

「おそらく入力データにミスがあると思われます。使徒のATフィールドを突破するには1億8千万kWの電力が必要です。

これは日本中の電力をかき集める必要があります。しかし、この国は世界でも珍しい電気の周波数が2つに分かれている国です。

これを一箇所で使用するには変電設備などに無理があります」

「ではどうする気かね」

「はい、この使徒の特性を見るとエリア侵入と同時に敵を排除するタイプのようです。

さらにATフィールドと加粒子砲の同時使用は無理のようです。そこに今回はつけこみます。

幸いなことに国連所属の実験戦艦「ミッドナイト」が東シナ海で実験中です。

これに搭載されたマスドライバーにより指向性N2兵器を使徒に発射します。

それと同時にならば第三新東京市の全電力6千万kWで事足ります」

「片方が失敗してももう片方で仕留めるか。合理的だがマスドライバーの命中率と距離はどうだね」

「マギの誘導さえあれば確実だと断言できます」

冬月がゲンドウを向く。

「・・・分かった。マギの使用を許可する。葛城一尉の作戦と同時に進行させろ」

「それではこれより作戦部の方に変更を通達を願います。私はこれより国連軍の方に連絡します」

「用件は以上かね。それでは下がりたまえ」

敬礼を返して法夜、リサが退室する。

「六分儀、葛城君をどうする。彼女は納得すまい」

「問題ない。上官の命令は絶対だ。それが分からん葛城一尉でもあるまい」

「だが彼女は感情が先走る傾向がある」

「今までの失態、さらに命令違反が加われば解任の理由としては充分すぎる」

「指揮は『ノルン』が引き受けると言って来ている。問題ない」

「ふうっ、わかった私は作戦部の方に通達してくる」

そういって冬月も作戦部に赴く。







双子山仮設発令所

さきほど戦自研から徴発した自走陽電子砲の設置や変圧器の設置で作業員がごった返している。

「なんですって、私の作戦が変更!」

「ええ、法夜が連れてきた『ノルン』のリサ大佐が作戦の変更を指示したのよ」

「なんでよ。この短時間で可能な作戦ではこれが一番成功率が高いのよ!」

「マヤも貴女も肝心な事を忘れていたようね。私にも連絡がほしかったわ、詳細はこれよ」

ミサトがひったくるようにファイルを受け取ると読み始める。

「あらかじめ言っておくけど、司令からこの作戦でいけと命令が出たわ。拒否できないわよ」

「・・・わかったわ。この作戦で行くしかないようね」

諦めたように作戦変更を伝えに作戦部員の所に向かう。







ネルフ・発令所

実験戦艦『ミッドナイト』にリサが連絡を入れている。

初老の域に入りそうな典型的な海の男を思わせる男が応対している。

「艦長、協力感謝するよ」

『前に助けてもらった礼だ。それよりも次の作戦の立案頼めるか』

「しかたないね。実行はそっちだけでやるなら引き受けてもいいよ」

『O.K.詳細は後で送る』

「それじゃあ切るよ」

「大佐、もうよろしいでしょうか」

「ああ、青葉二尉。もういいよ」

青葉にオペレター席を明渡す。

「それにしても大胆な作戦ですね。マスドライバーを使うんですか?」

「これでも慎重なんだよ。二重の策を張ってあるしエヴァも盾にミラーコーティングを施したし物を持たせた。

後は使徒の位置を戦艦に正確に伝えれば私の担当は終わりさ」

「最後まで指揮しないんですか」

「私は戦略を担当さ。政治と戦争を山に例えた奴がいてね。

『政治が登る山を選定して、戦略が登るルートを決め、戦術が実際に山を登る。』っていうことさ。

ここからは戦術、現場の仕事さ。それよりボウヤはどうだい」

「シンジ君ですか。先ほど意識が回復したようです。ファーストチルドレンが食事を運んでいます」

「私も、ボウヤのところに作戦の説明に行くから後お願いできるかい」

「はい」







病室

いまだシンジはベッドに眠っている。

そこにワゴンを押してレイが入ってくる。

「・・・んっん。誰・・・」

気配に気づき目を覚ます。

「・・・私よ。食事、持ってきたわ」

「綾波?そうかいきなりやられたのか。食事はそこにおいて置いてくれる」

「・・・ええ。それとプラグスーツの替えも入っているわ」

「そう、今どうなっているの」

「・・・現在、使徒はボーリングマシンでここに潜行中。その後新しい作戦部長が作戦の指揮を取っているわ」

「それって誰」

「私だよ。ボウヤでかくなったね」

国連軍の軍服に着替えたリサがファイル片手に入ってきた。

「リサさん。ようやく来てくれましたか」

「ああ、やっと片付いたんだよ。で、お嬢ちゃんがファーストチルドレン、綾波レイかい。

私は国連軍のリサ・メッカーノ大佐だよ。これからよろしく」

「・・・よろしくお願いします。メッカーノ大佐」

リサが握手をしようと手をさしのべる。

しかしいつまでもレイが手を取ろうとしない。

「綾波、どうしたの」

「・・・どうしたらいいの」

シンジとリサがガクンときそうになった。

リサがどうしたもんだとシンジを見る。

「ええ、綾波。これは握手を求めているんだよ」

「・・・なぜ」

「それはね、相手に親愛の念を・・・」

「ああっもうじれったいね。とにかくはい、握手!」

強引に手を握り握手をする。

「それじゃあ、予定を言うよ。二人とも一時間後にケージに集合、10分でエヴァを起動、双子山に向け発進。

後は双子山についてから教えるから。時間道理にケージに来ておくれよ」

いうことだけいってさっさとリサが病室を後にする。

「相変わらずだな。綾波、どうしたの」

「・・・あの人、分からない」

「何が、分からないの」

「・・・葛城一尉や赤木博士とは何か違う」

「ああ、気持ちいい人でしょ。付き合ってみると分かるけど豪快な人でね。

あの人をみていると小さな悩みが馬鹿馬鹿しくなって来るんだ」

「・・・そう」

「それじゃあ、綾波。できればそろそろ着替えたいんで出て行ってほしいだけど・・・」

「・・・そう、それじゃあ出て行くわ」

レイが出て行くのを確認してシンジも着替えだす。







椿館

今日の椿館には珍しく客が大勢きている。

30人の黒服を着た男達がロビーにたむろしている。

魔道省の襟章を着け、同省で黄道十二宮を除き最強の力をもつとされる『異界課』其れのみが着けること許された紫のマントを着用している。

「諸君、よく集まってくれた」

法夜が階段から降りてくると皆、整列して頭を下げる。

「諸君、顔を上げてくれ。今回の作戦を発表する。優、頼む」

階段を赤い髪をショートにした美女が降りてくる。

「今回の作戦は使徒と呼ばれる謎の生命体の攻撃を防ぐ。基本的に雷精の攻撃と同じ光術系統だよ。

でも通常の1千倍以上の威力がある」

「そこで俺の呪符だ。こいつは通常の1万倍の対光術防御力がある。こいつを使って防御結界を構築してもらう」

「詳しい説明は現地についてからにする皆、バスに乗り込んでくれ」

優に率いられ黒服三十人がバスに乗り込む為に出て行く。

法夜が残ってサクラ亭の方に入っていく。

ピザの生地を作りながらパティに話し掛ける。

「すまないな。急にピザ50人分頼んでしまって」

「いいえ、でも人数分よりかなり多くない」

「それがな・・・。リサが来たんだ」

「リサ〜〜!それ早く言いなさいよ!それじゃあもう少し追加しないとだめよ」

「ああ、パティに任せる」

生地をさらに練りながら話を続ける。

「でも、魔道省最強の部署である異界課が30人も集まるなんて珍しいわね。今回ってそんなにやばいの」

「ああ、防ぐだけなら難しい。持って五秒だ。エヴァの盾も強化しているがそれと合わせて25秒。撃てて第2射が限界だ」

「でもリサが舞台を設定したんでしょ。ならだいじょうぶよ」

「パティの元気には頭が下がるよ。それじゃあできたら連絡をくれ」

「O.K.三時間したら全部焼きあがるから連絡をやるから」

「それと、今夜は満月だ。強い酒を用意しておいてくれ」

悲しそうに法夜を見つめコクリと頷く。

しばらくサクラ亭ではピザと格闘する音だけが響く事になる。







双子山仮設発令所

すっかり日も暮れもう月が昇ってきた。

エヴァの拘留のための設けられた仮設ケージの前でリサ、シンジ、レイがブリーフィングを行っている。

「それじゃあ作戦の詳細を教えるよ。

最初は日本全国の電力を集めるつもりだったけど使徒の特性から第三新東京市の電力を使うだけで倒せるようになったんだ。

方法としては太平洋上の実験戦艦『ミッドナイト』からマスドライバーを使って打ち出される指向性N2爆雷で攻撃を仕掛ける。

こっちはこっちでこの戦自研から徴発して来たライフルで使徒を狙う。つまり同時に仕掛けるってわけさ」

シンジが手を上げる。

「なんだいボウヤ」

「ATフィールドはどうするんですか」

「あの使徒の特性は攻撃と防御は同時にできないってことさ。だから攻撃してきたら片方の攻撃でも倒せる。

防御しても同時に当たればATフィールドを貫いて使徒を倒してもお釣りが来る計算さ」

「もし外したら」

「盾で防御してもらって時間を稼ぐしかないね。ライフルの再充填と戦艦の爆雷装填に合計20秒。

盾は計算上25秒。二発目まではだいじょうぶさ。

それじゃあ分担を伝えるよ。ボウヤがスナイパー、レイ嬢ちゃんが盾を頼むよ」

「何でですか!僕のほうがシンクロ率が高いしATフィールドも強力なのを張れます!」

「すまないね。今回はATフィールドが使えないんだよ。それに高いシンクロ率がどうしても必要なんだよ」

「・・・私は・・・碇君を守ればいいのね」

「そうさ。でもこれだけは聞きな。ボウヤ、アンタにも言っとくよ。私らはできうる限りの生還率の高い作戦や指揮を提供する。

でもね、ほんとの戦場で生き残るには何が何でも生き残るって気迫だよ。

アンタ等二人にはまだまだやりたいこと、可能性があるはずだよ。それをこんなことで命散らすんじゃないよ」

「分かりました。リサさん必ず還ってきます」

「・・・でも私が死んでも・・・」

ゴチン。

リサがレイの頭にげんこつを加える。

「・・・痛い」

「いいかい!綾波レイ、簡単に死ぬなんていうもんじゃないの!分かったらさっさといきな!」

リサが本気で怒っているのをシンジが感じ取る。

この場はだまって行動するのが懸命と考えたシンジがレイの手を引きながら急いで仮設ケージを登っていく。

「やっと行ったかい。女の子があんな眼をしちゃ終わりだよ」

リサが一人で先ほどのレイの瞳を思い出していた。

仕事柄、心理学を学び実際に戦場での兵士も見てきた。

レイの瞳は戦場で見たすべてに未練がない、絶望した瞳。

「ホウヤに相談してみるか。そういえばピザが届いてたね。作戦まで食べさせてもらいますか」

基本的に作戦まで楽観するのが基本のリサは、発令所に戻って法夜が持ってきた好物のサクラ亭のピザを食べる事にした。







仮設ケージ

一気に階段を普段の倍以上の速さで駆け登った為シンジもレイも息を切らせて座りこむ。

「だいじょうぶ、綾波」

「・・・まだ頭が痛いわ」

「ハハハハハハハ・・」

ひとしきり笑った後レイの向き直る。

「綾波がリサさんを怒らせるからだよ。リサさん、子供が好きだから子供が死にたいとか死ぬっていうと本気で怒ってくれるんだ」

「・・・どうしてリサ大佐はあんな事をするの」

「リサさん。セカンドインパクトで弟を亡くしてからお義父さんと会ったんだ。そしてしばらくして僕がお義父さんに引き取られた。

その時の僕は母さんが死んでゲンドウに捨てられてね。もう全部どうでもいいと思って死にたいと思っていたんだ。

それをリサさんが怒ったんだ。『生きたいと思っていた人が死んで、死にたいと思っている人が生き残るのは間違ってる。

生き残った以上死んだ人間の分まで生きてみな。それをアンタの母さんも望んでるはずだよ。』っていってね。

それにお義父さんの知り合いみんなから励まされて今の僕がいるんだ。・・・ゴメン、なんかわけ分からなくなっちゃったね」

「・・・なんとなくわかる」

「ねえ、綾波はなんでエヴァに乗るの」

「・・・絆だから」

「・・・司令との」

「・・・いえ、みんなとの・・・」

シンジも真剣な顔になって喋る。

「そうか、僕はみんなに恩返ししたいんだ。

みんなそんなことしなくてもいいって言ってくれるけど僕はみんなに支えもらってばかりのお荷物になりたくないんだ。

それが僕のエヴァに乗る理由さ」

「・・・そう」

レイが立ち上がったとき月がちょうど中天に昇り月光が降り注ぐ。

まるで絵本の中にしかありえない妖精が目の前にいるように錯覚する。

「・・・そろそろ時間よ。・・・さよなら」

「ちょっと綾波!こんなときは『また会おう』だよ。お義父さんのお守り持った」

「えっええ。着けているわ」

「それじゃあ、また会おう」

「・・・また会いましょう」

第三新東京市の全ての明かりが消える。







ネルフ・発令所

「いよいよ始まるか」

「ああ、電力と指揮権を双子山に回せ」

「了解。ネルフ電力、20%にダウン。指揮権を双子山仮設発令所に委譲」







双子山仮設発令所

「いいかい。焦るんじゃないよ。マギで補正するからシンジはマーカーが揃ったら発射。

レイは敵が反撃してきた時にのみ防御に回って。いいかい、必ず帰って来るんだよ。それじゃあ作戦開始!」

『了解!』

『・・・了解』

「第一次接続、開始します」

「変圧器、冷却器始動」

「第二次接続開始」







初号機内

シンジがヘルメットのような照準器を被る。

『ライフル、実装』

指示に従いヒューズを装填する。

『第三新東京市、全発電施設フル稼働』

『第三次接続、全電力ポジトロンライフルへ』

「なんだ。この光おかしいな。まさか!」

怪訝そうに眉をしかめてあることに気づく。

その瞬間、使徒も活動を開始する。







双子山仮設発令所

使徒が加粒子砲を発射させるべく円周部を加速させていく。

「まさか!ちっ、ミッドナイトに次弾の準備を通達」

異変に気づいたリサが指示を出す。

「どうしてですか」

ミサトが分からんといった風に聞く。

「まず見ていな」

「エヴァ発砲!」







試験戦艦「ミッドナイト」

現在、太平洋上に出て第三新東京市をその射程に捕らえる。

本来、大気圏外で長距離輸送の為に考案されこの艦で実験されていた。

重力を抜け出すためにマスドライバーは長い距離を加速させねばならない。

しかし、特殊なコンテナを使用しコンテナ外部にも付けられたエンジンで急加速、燃料が尽きた所で指向性N2爆雷をコンテナから推進剤を噴射。

そのままトップスピードと重力を利用しさらに加速し使徒にぶち当てることになっている。

「マギとの接続良好」

「マスドライバー、軌道修正よし」

「こちらに衛星画像届きます」

戦艦の中央制御室の画面に使徒が映し出される。

「これが使徒か。ピラミッドを2つくっつけたような形だな。それともクリスタルか。どう思う、副長」

黒人の副長が生真面目に答える。

「分かりません。とにかく倒すべき敵だと言うことは確かです」

「そうだな」

「艦長、コンテナ準備完了。いつでも射出できます」

「そうか。副長、秒読みを頼む」

「はっ、了解しました」

胸ポケットから金の懐中時計を取り出す。

「30・・25・・20・・15・・10・9・8」

武器管制官がごくりと喉を鳴らしボタンに手をかける。

「5・4・3・2・1・発射!」

合図と同時にコンテナが轟音と供に飛び去る。







第三新東京市

使徒の発射前にエヴァがライフルを発射。

同時にコンテナも使徒に向けて音速以上で突っ込んでいく。

それは使徒を倒すと考えられた。

だが、使徒は円周部からリングじょうに加粒子砲を発射した。

コンテナは爆発した。指向性であったのが幸いしビル一つを吹き飛ばし残りの爆発力は空に放出した。

ライフルは曲げられ中心部から右下の方に外れることになった。







双子山仮設発令所

皆驚きで固まっている中リサの激が飛ぶ。

「ぼやってしてんじゃないよ!ライフル次弾準備!ボウヤ、ヒューズ交換!ミッドナイトにも次弾発射と座標変更依頼!」

慌しく職員が動き出す。

ミサトが先ほどの質問を繰り返す。

「これを予見していたんですか」

「ああ、最初の加粒子砲とチャージの時間が違っていたんだよ。それで何かあると思ったんだが。

ボウヤ、相手に場所を察知された。次はコンテナ狙いなよ。レイ、盾で防御して発射まで時間を稼ぎな」

先ほどと変わって安心した表情になったリサをミサトが不思議がる。

「どうしてそんな顔ができるんですか。こんなに不味い状況なのに!」

「どうして、こっちが圧倒的に有利なのに?まず見ていな。次に加粒子砲をコッチに発射した時が最後さ」







エヴァ初号機

ヒューズを交換したとき使徒が再び円周部を加速させ始めた。

「コンテナ?そうか。さあ、撃ってこい」

リサの指示を理解したシンジが気合とともに操縦桿のグリップを握る。

レイも初号機の前に零号機を動かし盾を構えて立つ。

しばらくして使徒が加粒子砲を再び発射する。







「ふッ今だね。総員、結界展開!」

優に率いられた山のふもとにいた異界課が1千枚もの符を零号機の盾に展開した。

「フェイド、いいか」

「いつでも」

藤原が姿を変える。

人ならざる者。

本来の姿、死者の王バンパイアへと。

法夜と同時に呪文の詠唱に入る。

『創生に残されし闇、残された混沌の欠片よ。我らに仇す物を妨げよ。混沌・防御壁(カオス・ウォール)』

空間自体を遮断する最高位結界を発動し周囲を闇が包み込む。







零号機に命中した加粒子砲は結界で弱められているが依然として盾の防御力を削っていく。

「綾波、もう少しだ。もう少し待って」

方向を使徒の上空に向けるカーソルの乱れ徐々に修正されていく。

そして使徒が中を察知して攻撃を止め溜めにはいる。

同時にコンテナが飛んでくる。

「いけ!!」

ライフル発射と同時に使徒もコンテナめがけ発射。

シンジ、コンテナの下部を吹き飛ばし失速させる。

使徒の加粒子砲は外れ、残された上部コンテナに搭載されたN2爆雷が使徒に命中し使徒を吹き飛ばす。

使徒が崩れ落ち勝利が確定した。







双子山仮設発令所

歓声に包まれるなかリサだけが呆れていた。

「祝うのは後だよ。エヴァの回収はどうしたんだい。それに零号機パイロットは。やる事はまだまだあるんだよ。

祝うんならパイロット二人の安否を確認したからだよ。まず、零号機からかかんな。

盾でも熱は防げないんだから救護班もついてきな」

率先して動き出し外に飛び出す。

浮かれていた職員も急いで回収の準備に動き出す。

「・・・専門家。さすがね」

ミサトも先ほどの指揮を思い出しながら悔しそうに自分の仕事に戻って行く。







「綾波、だいじょうぶ!」

シンジは急いで零号機に通信を入れる。

やや疲れた顔でレイが答える。

『・・・ええ、少し熱いけど問題ないわ』

胸のネックレスの石が砕けているのがシンジの眼に見えた。

「(守護石だったのか。)そう、綾波。また会えたね」

『・・・ええ、会えたわ。碇君。』

シンジは微笑みながらレイに問い掛ける。

「どう、生きているって」

『・・・分からない。どうでもいいもの』

「生きているからできることをやってみよう。まず、笑ってみようよ。綾波の笑った所ってみた事ないな。綺麗だとおもうな」

 『な、なにをいうの・・・』

照れるレイの反応にシンジも嬉しそうだ。

「ほら、笑って見て」

『・・・・・・』

シンジの微笑みに連れてぎこちなくだがレイも笑みを浮かべる。

「よくできました。生きていくことは楽しむことが大切なんだ。笑いながら生きていこう綾波」

シンジの満面の笑顔にコクン頷くレイ。

心の中がとても暖かいと思える時間だった。







椿館・法夜自室・テラス

後始末を確認して優とともに椿館に戻ってきていた。

藤原は人員を再配置しに行き、シンジはネルフ、従業員、宿泊客も今だシェルターである。

ここには優、沙夜、パティ、イヴだけがいる。

テラスに出されたテーブルにワイン、日本酒、ウォッカ、ジン。

数々の酒が並べられていた。

「みんな。すまないが付き合ってくれ」

グラスを皆いっせいに掲げる。

「月の狂気が我が身を飲み込まんことを願って」

「「「「月の狂気が(キミ、法夜、法夜、貴方)を飲み込まんことを願って」」」」

酒宴が静かに始まる。

今だ月は中天近くにあり下界をたらしている。


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設定

山岸ゲンマ

マユミの父親。京都の名家山岸家の現当主。

京都の結界を代々守護してきた。

式と呼ばれる使い魔を使う。

法夜やコウイチロウとは古い知り合い。

「鬼のゲンマ」の異名を持つ。

ハンターランク・A+



イヴ・ギャラガ―

フランス国籍

椿館内にバー「イヴ」のマスター兼財団飲料系部門統括

元は財団の文化部門のフランス文学部門担当官だがとある魔導書の関係で事件に巻き込まれる

その際に法夜に助けられる

文化部門から飲食部門に移りワインで成功し総統活となる

フランス人に珍しい艶のある黒髪を腰まで伸ばしている

仕事時は黒のチョッキを着ている。プライベートでは意外と厚着を好む

普段は表情から感情を読み取ることが難しく常に理論的に行動するが恋愛関係では純情である

文化部門当時はメルフィと組んでいた



リサ メッカーノ

イタリア国籍

元傭兵の現国連軍大佐

ヴァネッサ、オーレリィとチーム「ノルン(運命の三女神)」を組んでいる

チームリーダー コードネーム「ウルド(未来を司る女神)」戦略担当

三人でチームを組んで行動し幾多の作戦を成功させる

チームを組む前の傭兵時代にある教団に雇われ法夜と戦う

だが実力が違いすぎ遭えなく敗退

逆に助けられ戦略理論を教え込まれる。そして色々な意味で心酔していった。

褐色の肌に艶のある銀髪を立てている。

ぶっきらぼうだが女性らしい面も多々ある



七瀬 優

魔道省『黄道十二宮(ゾディアック)』司令補佐

多忙な法夜に変わり書類の整理や情報収集を行う。

符術師で火炎系の符を好んで使うため『紅蓮華(ぐれんか)』と呼ばれている。

燃えるような赤い髪をショートにしている。

旅行が好きで星空を見に行くのが趣味だがここ数年はあまり時間が取れないとぼやいている。

法夜の恋人。

ハンターランク・A+



藤原正也

正体は魔界を統べる「十三公家」筆頭吸血鬼族の族長ガレム公爵の第三公子。

一族の成人に必要なプラチナオーラを持つ女性の血を求めて人間界にやってきた。

法夜の屋敷に世話になっていた。

魔法・術の使い手。黄金の牙という魔導剣(力を吸ってライトセーバーのようになる)を持つ。

3年前に恋人の「十三家」夢魔族リリトの第三公女リリカと結婚・独立する。

「鮮血の公子」呼ばれる。

ハンターランク・A+

黄道十二宮メンバー。

天王星(ウラノス)水瓶座アクエリアス







『混沌・防御壁(カオス・ウォール)』

ランク・最高位

魔界の最高貴族『十三公家』にのみ伝わる最高位の絶対防御壁。

創世時に残された闇やカオスと使い全てを拒絶、変質させる壁とする。

術者にもよるが魔界創世神「ルシファー」は神の炎すらこれで防ぎきったと伝える。

 

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あとがき

どうもカオスです。ようやく後編もあがりました。

そして、フェイド君登場です。95年にアトラスから出された「いまどきのバンパイア」という恋愛シュミレーションの主役です。キャラの声に結城比呂、大塚明夫、関俊彦、速水奨、井上喜久子、冬馬由美、山崎和佳奈、永島由子が声をあてたんです。

このゲームの評価はシナリオとキャラデザインをしたで勝負したものでクソゲーなどではだんじてない!シナリオはキャラの個性を最大限に生かし、ラストのフルアニメーションで泣かす。キャラは月間Gファンジーで御馴染みの高河ゆん先生で美形キャラをばしっとデザイン。これを名作と言わずとして何と言おうか。ちなみにキャストはフェイドが結城比呂、リリカが冬馬由美、カレンが山崎和佳奈です。

三年間のパロメーター合わせがシビアだがそこはデートで愛情値をカバー。

持ってる人は今一度、やった事のない人はぜひやってみてください。声はアニメの部分しか入りませんがシナリオがいいんです。

とここまでで暴走はやめて本題に入ります。

ようやくリサが登場しました。そしてヴァネッサとオーレリィ、どのゲームのキャラか分かるかな。ゲームは顔のないお月さんもクリアしたしハートの3か、姉さんでも買おうと思っているカオスでした。

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トマトのコメント

設定が細かく書いてあっていいですね。

…誰かさんはまったく設定など立てずに小説を書いているのです。

とりあえずここまで使徒戦は本編通り来てる見たいですね。

では、皆さんカオスさんにぜひ感想メールをお願いします。

…俺は「KANON」と「太閤立志伝4」をやりたいなぁ、でも金がない。

そういうわけで今やってるゲームはスーパーファミコンの「キャプテン翼4」です。

確か1993年の発売…8年前のゲームかよ。…もうすぐ9年前になる。

 

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