闇と福音を伝える者

第六話「実験」







第四使徒解体現場

山に倒された使徒が解体、解析を始められている。

第五使徒も同時に解体作業を進めている。

急に比較対象が増えたため人手が足りず、分散で解析作業が始まった。

シンジもリツコに呼ばれて現場の解析室に来ていた。

「それで何でどうして僕を呼んだんですか」

「それはね・・・」

「リツコ〜居る?ゲッ!」

急に入ってきたミサトが渋い顔をした。

「ミサト、あなたを呼んだ覚えはないわよ」

「葛城さんは僕が居るのがご不満のようですね」

「そっそんなんじゃないわよ!それよりリツコ報告書説明してよ」

動揺しながらミサトはジャケットから畳んでシワだらけになった報告書を取り出した。

「詳しく書いたつもりだけど分からなかったかしら」

「分からないからこっちまで来たのよ」

「呆れた。断言するような事?仕方ないわね。シンジ君にも説明するからついでに聞けばいいわ」

そういうと近くにあるモニターを操作した。

「まずこれを見て、これは人と使徒の遺伝子配列よ」

「これって!」

「そうよ。酷似しているわ。99.89%ね。あらためて私達の科学の浅はかさを思い知らされたわ」

「それってエヴァと同じじゃない」

「ええ、それでシンジ君。法夜から何か聞いていない。」

「いいえ。それよりリツコさんが聞いたらどうですか。お義父さん、いくら誘っても来てくれないって言ってます」

誤魔化すようにタバコを取り出し火をつけて深く吸って息を吐き出す。

「気が向いたらね。ところでこの頃見かけないけど、どこに行ったの」

「三日前から信州の方に仕事で出張だそうです」







信州・倉木家

古くから信州で商家として名高く現在でも連城財団の中核グループでもある倉木グループの当主倉木浩一の自宅である。

旧家だけあって応接間から見える庭はよく整理されていて椿が綺麗に色付いている。

内装も椿館のような明治・大正様式にまとめ上げられていて豪華だが気品がある。

庭の椿を眺めながら法夜が物思いに耽っていた。

応接間のドアがノックされ二人のメイドが入ってくる。

「連城様。旦那様、奥様達はもうすぐいらっしゃいますのでおくつろぎください」

コケティッシュな感じのするメイドが椅子を勧める。

「すまないね栗原君。春川君、紅茶は蜜にしてくれ」

「はい。椿の蜜でしたね」

もう一人の春川と呼ばれたメガネをかけたメイドが紅茶に蜜を垂らす。

「「それでは失礼しました」」

紅茶をおいて二人が下がる。

一人紅茶の香りを楽しみ口にする。

「うまいな。椿の香りと甘さがなんとも言えん」

再びドアがノックされる。

「はい、どうぞ」

「失礼します。旦那様、奥様達をお連れしました」

ドアが開き、若い男と双子と思われる女が栗原の案内で入ってくる。

「私、お茶を用意して参ります」

一礼して栗原が出て行く。

「お久しぶりです。会長さん。お姉ちゃんも浩一も挨拶してよ」

「おっおう。お久しぶりです法夜さん」

「・・・・・・」

もう一人の女が笑いながらペコリとお辞儀する。

「相変わらずだね。三人とも・・・。倉木君も尻にしかれているね」

「それはいいっこなしですよ。それより法夜さんの方はどうなんですか。相変わらず女癖が悪いんですが」

「きついな。俺は遊びで付き合ってはいないんだぞ」

「・・・・・・」

女の姉の方が法夜と浩一の袖を引っ張る。

「ああそうだな、水菜君。今回は世間話をする為に来たんじゃない」

真剣な顔になり四人とも椅子に腰掛ける。

「近い内に第3で大祓いが行われることは知っているな」

「ああ、だが俺は反対だ。鈴菜や水菜が危険な目に会うのは嫌だ」

「ちょっと浩一。今になって反対しないでよ」

「・・・・・・(コクリ)」

「黙ってろ。これはお前達の夫として言ってるんだ」

「今回は危険はない。断言できる!」

「それでも俺は心配なんだ。そこで今回は俺も同行する」

「おいおい危険なんだぞ」

「さっきと矛盾してるぞ。それに俺は水菜の供達だ。万が一の場合でも昔取ったなんとやら」

「フウッ、分かった。基本的な詰めは後で連絡する」

「ちょっと法夜さん!どういうつもりですか!」

鈴菜が額に青筋を作ってわめき立てる。

「仕方がないだろ。このバカは自分も行くかないと気がすまんらしい」

やれやれといって風に首を振り立ち上がる。

「・・・・・・(ギュ)」

水菜も袖をギュッ掴んで放さない。

「二人とも・・・。時間なんだが」

「お姉ちゃんも納得してないみたいよ。法夜さんもう少し説明してくれませんか?」

「倉木君に危険はなかろう。それだから許可したまでだ。これは魔道省の最高責任者としての判断だ。

それに旦那が居た方がなにかと励みになるだろう。それではな」

「何いってんだよ!俺はだな、この二人が危なっかしいから俺がついていてやらないと・・・」

「聞き捨てならないわね。どこが危なっかしいのよ!」

「・・・・・・(コクコク)」

三人が動揺している間に振りほどいて部屋を出た。







廊下

相変わらずだなと微笑みながら廊下を玄関に向けて足を運ぶ。

「もうお帰りですか〜」

「んっ、栗原君。三人とも痴話喧嘩の真っ最中だ。入るときに気をつけるといい」

「そうですか〜。それじゃあ玄関まで御送りします」

「それじゃあお願いしよう」

栗原が案内をしながら世間話が始まる。

「でも旦那様達が重婚なさるなんて思いませんでしたよ〜」

「そうか?倉木君のあの時の物言いだと充分予想される事態だ。

もっともその為に奔走させられて国籍や書類なんかの用意に手伝わされるとは思わなかったが・・・」

「でもそのおかげで旦那様達、幸せそうですしいいじゃないですか。

ところで連城様の方はどうなんですか。かなりお盛んらしいですが」

「人聞きの悪い事を言うメイドだ。彼女達とのことは他人にとやかく言われたくはないな」

さっきまでとは違い急に冷たい声になって答える。

「・・・すいません」

「いや・・・。私も少し感情的だった。すまん」

それっきり玄関まで無言だった。







中学校

ちょうど昼時になり気に入った仲間とグループを作って弁当を広げている。

シンジ達もトウジ、ケンスケ、ヒカリ、そして先週転校してきたマユミも加わってにぎやかに食事を楽しんでいる。

「シンジさん。こっちのから揚げもどうですか」

「ああ、マユミさん。僕のことはいいから自分の食事をしてよ」

「ひどい、私をもう嫌いになったんですね」

「そっそんなことないよ。マユミさんはすっ好きだよ」

眼を潤ませて泣きそうになるマユミをシンジがなだめる。

ここ数日のパターンとなってきている。

「ほんまセンセも相変わらずやな。パターンちゅうもんが分からんかな」

「それもだが転校してきた時は驚ろかされたな。いきなり『シンジさん(ハート)』てシンジの顔を見るなり抱きつくんだからな」

「ほんまにあの時の委員長も『不潔よ!』とかなんとかいうて暴走する始末や」

「もう忘れなさいよ!鈴原も相田君も」

ヒカリもあの時の狼狽ぶりを思い出して赤面する。

「ところで碇、明日は休むらしいが何かあるのか」

「うん、明日お義父さんの用事に付き合うことになってるんだ」

「センセもお父んが大物やと大変やろ」

「そんな事ないよ。四歳の時に引き取られてから本当によくしてもらったんだ。たまに手伝いでもしないと罰があたるよ」

「私も小父さまのことを小さい頃からよく知っていますが本当にいい人ですよ。

みなさんも一度会えばわかりますから。シンジさん引越しの方が済んだら紹介なさったらどうでしょう」

「そうだね。そうしようか」

「そっそういえば明日どこに行くんだ」

二人の世界にあてられるのはごめんだとケンスケが話題を切り替える。

「ああ、旧東京の法で何かの発表会なんだって」







旧東京 JA完成記念祝賀会会場

セカンドインパクトとN2兵器が使用された現在ではその大半が海の中に沈んでいる。

そして今は日本重化学工業共同体の実験場となっている。

現在、日本重工が開発したJAと呼ばれる対使用二足歩行ロボットの完成式典が開催されている。

「まったく、大人気ないわね」

「まったくね。うちの利権にあぶれた連中の嫌味。私達を吊るし上げたつもりなんでしょう」

本来、リサとリツコが来る予定だったが引継ぎ作業や残った事務手続きなどで国連本部に戻った為にミサトが代理で出席していた。

実際ネルフ御一行と書かれたテーブルはさらし者のように全体から見えるような場所に用意され、

中央にビールが数本置かれただけ、他のテーブルは料理や飲み物がしっかりと用意されている。

こんな所でもネルフがよく思われていないことがよく分かる。

「でもさあ。連城さんの方もそっちに呼んでくれてもいいんじゃない」

「あなた、正気?この前の戦闘で法夜をどれだけ怒らせたかもう忘れたの」

呆れた口調で答えて法夜がいるテーブルの方を見る。

連城財団御一行と飾り立ててかかれたプレート、他のテーブルよりランクの高い料理と別格扱いである。

そこに法夜、シンジ、キャリアウーマン風のメガネをかけた秘書らしき女性が座っている。

しばらくして白衣を着た責任者らしき男が法夜に近づいて何事かささやいている。

法夜も嬉しそうに何事か返すと男が壇上に立つ。

「みなさん。お忙しい中お集まりいただきありがとうございます。私、責任者を務めました時田シロウと申します。

それでは本機体の説明を始めさせていただきます」

それから細かい説明が30分ほど続く。







「・・・以上です。何かご質問のある方はいらっしゃいますか?」

「はい」

「おお、これはご高名な赤木博士にお越し頂き、光栄の至りです」

「質問を、よろしいでしょうか」

「ええ、ご遠慮なくどうぞ」

「先ほどのご説明によりますと、内燃機関を内蔵とありますが」

「ええ、本機の大きな特徴です。連続150日間の作戦行動が保証されております」

「しかし、格闘戦を前提とした陸戦兵器にリアクターを内蔵する事は安全性の点から見てもリスクが大きすぎると思われますが」

「五分も動かない決戦兵器よりは役に立つと思われますよ」

「遠隔操縦では緊急対処に不安を残します」

「パイロットに負担を掛け、精神汚染を起こすよりは、よほど人道的と考えます」

「人的制御の問題もあります」

「制御、と言う問題なら、あの化け物の方がよっぽど制御しづらい物のように思えますがねえ。

ヒステリーを起こした女性と同じように」

会場中から嘲笑がおこる。

「なんと言われようとも、ネルフの主力兵器以外にあの敵性体は倒せません!」

「A・Tフィールドですか?それも時間の問題ですよ。何時までもネルフの天下だと思わない事ですな」

「止しなさいよ。大人気ない」

いつの間にかどこぞからかっぱらって来たビールをのんでいるミサトがリツコを止める。

リツコは手を色が変わるほど握り締めて座る。

「それでは休憩後に起動実験を行います。皆様、後ほど管制室にお集まりください」

誇らしげに一礼し拍手の中退場する。







ロッカールーム

ミサトが腹立ち紛れにロッカーをベコベコに蹴っている。

「ミサト、いい加減にしなさい」

「だってリツコ。気分悪くないの!」

「自分を褒めてもらいたいだけの小さな男よ。大したことないわ」

そういってパンフレットに火をつけて燃やす。

「リツコ。そろそろ行きましょう。あの男ご自慢の木偶人形を見に」

「ええ、そうしましょう」

いささかすっきりした表情でロッカールームを出る。







JA管制室

シェルターを改造して作った管制室に巨大モニターが設置されている。

出席者全員がモニターに映されるJAに注目している。

「それでは起動実験始めます。なんら危険はありません。安心してご覧ください」

時田が制御員に起動を指示する。

格納庫に座っていたJAの背中から制御棒が伸びる。

そして立ち上がり歩き出す。

速度はゆっくりとだが一歩一歩しっかりした足取りだ。

「自慢するだけのことはあるようね」

「そうね・・・」

「時田が機体の駆動系を担当したんだ。うかつな動きはせんよ」

いつも間にか後ろに法夜、シンジ、連れの女性が来ていた。

「あの開発責任者とどういう関係なんですか」

ミサトが機嫌悪そうに問う。

「時田は財団の次世代産業ロボット開発部門の総責任者だったんだ。

今回、巨大ロボットを製作するということで要請が来てな。出向と言う形で参加させた」

「会長、そろそろ・・・」

「ああ、そうだ。彼女の紹介がまだだったな。メルフィ」

「メルフィ・ナーブと申します。連城会長の秘書を務めさしていただいております」

そういってミサトとリツコに名刺を差し出す。

「ご丁寧にどうも。私は・・」

「ネルフの赤木リツコ博士、同じくネルフの葛城ミサト一尉ですね。私の方ではよく存知上げております」

リツコが自己紹介遮られ怪訝な表情をする。

「法夜からですか」

「いいえ。仕事柄、各界の方達とお会いすることが多いので、お二人のことはそこから」

「ろくな話がじゃないっしょ」

「はい。ですが、私は他人の評価は自分の評価と一線を引くようにしています。

そうしないと人物を見誤る可能性がありますから」

「そうですか。では私達をどうみます」

「そうですね。見たか・・」

「ちょっと待ってください。お義父さん、メルフィさん。なにかおかしいですよ」

大人達のやり取りよりJAの方を見ていたシンジは異変を直ぐ察知した。

制御官やオペレーター達の動きが急に慌しくなりJAがこっちに迫ってくる。

「メルフィ、時田を呼んできてくれ」

「はい、少々お待ちください」

メルフィが時田の下にいき二、三言交わす時田を連れて戻ってきた。

「会長、不味い事になりました。JAの暴走です」

「なんですって!一体どういうことよ!」

ミサトが騒ぎだすが法夜が抑える。

そうしている間にJAがさらに近づき、ついにJAの足がシェルターの中央部分の天井を突き破りさらに進んでいく。

ちょうど観客も異変に気づき、逃げ出せるよう入り口近くに集まっていたため幸い死者はでなかったようだ。

「事情を聞こう」

今だ埃が舞う中で法夜が冷静に時田に問い掛ける。

「はい、JAが急に制御を離れ暴走を開始しました。敷地外に出る事はありませんがこのままだと一時間以内に炉心融解、メルトダウンの可能性があります」

「止める方法はないか」

「先ほど炉心に停止信号を送りましたが機能しませんでした。色々試しましたがもう他には・・・」

「いえ、まだ他に方法があるはずよ。すべてを白紙にするね」

ミサトが時田に詰め寄る。

「私にその権限はない」

「なら権限のある奴って誰よ!」

「私は開発責任者『だった』んです。今の責任者はあそこにるスーツに男ですよ。二ヶ月前に急に責任者になったんです」

オペレーターの周りで喚いている小太りの男を教える。

「今回はスペックを理解している私が説明役に選ばれただけです。

ですからあの男に聞いてください」

ミサトは聞くが早いか男のもとに行き一気に締め上げる。

「粗野な方ですね。軍人だからでしょうか」

メルフィが呆れ顔で法夜に聞く。

「彼女は地ではないのか?それよりも避難しよう。リツコ、君はどうする」

「ミサト次第ね」

「そうか。時田、職員と招待客の避難の指揮を取れ」

「はい。会長はお早く避難ください」

「わかった。シンジ、メルフィ。機内に避難して様子を見よう」







特別改造SSTO「ゴグマゴク」

法夜が移動する際に使う小型長距離旅客機として使用。

エアーフォス1以上の防御力と機動性を持つ。

垂直離着陸も可能で乗り心地も最高の20人乗り。

現在、法夜、シンジ、メルフィを乗せ離陸し暴走するJAを上から眺めている。

招待客も次々とVTOOLやヘリで逃げ出している。

「お義父さん、どうします」

「時田を回収してさっさと逃げるさ」

「会長、後20分したら回収してほしいと時田さんがいってきました」

「そうか。20分後に正面入り口に着けてくれ」

パイロットに指示し自分の座席に座る。

「さて、どう出る。ネルフ」







ロッカールーム

ミサトが防護服に着替えながら電話をする。

「日向君。旧東京に大至急レイと零号機を持ってきて。そう・・・。そう・・・。お願いね」

電話を切って着替えを続ける。

「ミサト、やめなさい。無駄よ」

「後悔するまえにやれることやっておきたいのよ」







ゴグマゴグ機内

「ほう、零号機で止める気か」

着陸し時田の回収を始める。

「ええ、ネルフの女があの男からパスワードを無理やり聞き出したようです」

時田が機内に姿を見せる。

「そうか。上昇して高高度で静止してくれ。時田、お前も座れ」

パイロットに指示をし時田に座席を勧めて自分も座った。

ゆっくり上昇を開始して高高度をとりJAを監視する。

法夜が双眼鏡で零号機がキャリアから落とされてミサトを手に乗せてJA近づく。

零号機がJAを後ろから押さえた隙にJAの内部に乗り込む。

「直接いったか。時田、内部はどうなっている」

「かなりの高温です。それと後3分です」

「ならじっくりと観察させてもらおう」

時田も双眼鏡を手にJAを観察する。

零号機が必死にJAの動きを止めようとしている。

次第にJAの全身から蒸気が噴出し始める。

蒸気の流失を防ごうとしている零号機。

「そろそろ、臨界です」

時田の言葉と供にJAが急停止、制御棒も引っ込む。

同時に零号機も力尽きたように動かなくなる。

「止まった。これで安心ですね」

「そうだな」

シンジがほっとした顔で法夜を見る。

しかし法夜はそっけなく返して今だJAから眼を放していない。

しばらくしてJAがムックリと立ち上がり再び歩き始める。

敷地内のビルやシェルターを破壊する。

さきほどよりさらにパワフルな動きをみせ暴れ回る。

しかし10分でJAが再び止まった。

今度こそ再起動の兆候は見えない。

「シンジ、お前を第二の空港で降ろしてヘリで第三に戻ってくれ」

「ええ、構いませんが。お義父さんはどうするんですか」

「第二で仕事だ。パティには食事はいらないと伝えてくれ」

「はい」







ネルフ・総司令室

今度の件でリツコが報告に来ている。

「では、再起動の原因は不明ということかね」

「はい、こちらのプログラム上は何も問題はありませんでいた。考えられる事はJA本体に何か仕掛けがされていた可能性です」

「しかし、一体誰がやったというのかね」

「可能性の範囲ではそれこそ無数です。JAにはあまりに多くの企業体が参加したため特定が不可能となっています」

「・・・ならば構わん。JA計画は今回で流れた。問題ない。赤木博士、戻りたまえ」

「・・・・・・はい」

リツコが不満顔で退室していく。

「彼も迂闊だな。今回の仕掛けは不十分だったな」

「問題ない。鈴に過大な期待を抱くつもりはない」

ゲンドウがいつもどおり手で口元を覆いニヤリと笑った。







第二東京・ネオ新宿

平凡なビル群の中に魔道省の本省ビルがカモフラージュされ建てられている。

概観は一般の40階建ての高層ビルと変わらず一階に受付嬢もいる。

しかし、二階から結界で関係者以外は幻を見せられ、21階以上では認識もできないようにされている。

ビル自体にも強力な結界がなされ、魔王だろうが熾天使(セラフ)だろうがびくともしない。

そんなビルの最上階に法夜の執務室がある。







法夜執務室内

室内は専用の黒檀でできたデスクとセットの椅子、壁に年代物の無名画家の絵、調度品の壺、レコードプレーヤー、本棚、応接セットが置いてありどことなく嫌味が無い部屋になっている。

法夜がデスクの椅子に腰掛け右手にメルフィが控え、正面に時田が起立している。

「まずは、おめでとう。10年の研究成果みせてもらった」

「ありがとうございます。これで『エレメント・エンジン』の実用化にこぎつけることができます」

時田が誇らしげに笑うがメルフィが水をさす。

「時田さん。『アーマー』の予算ですが基本的には量産すればコストはダウンできますか」

「補佐官、ある程度はダウンできますが黄道十二宮(ゾディアック)のメンバー用は専用となってしますために他の数倍はかかります」

「人の命には替えられませんが予算は無尽蔵にあるわけではありません。結界の補修、人員の育成、装備の強化など莫大な費用が・・・」

「メルフィ、予算は私が搾り出させる。それより、今日だったな。『神衣』の輸送は」

「はい、優さんが行っています」

コンコン。

「どうぞ」

「戻ってきたよ」

優が書類を片手に入ってきた。

「荷揚げは第二の波止場で行って、現在はここの地下研究所に運ばせた」

「上出来だ。時田、お前を再び魔道省兵器第二課課長に戻す。存分に手腕を発揮してくれ」

「はい、では神衣とアーマーの調整に向かいます」

一礼して時田が退室するのを確認すると優が書類の束を渡す。

「この書類は何だ」

「キミから頼まれた綾波レイの検査結果さ」

「もうでたか」

「ホウヤさん。なんですか」

「リサがレイ君について調べてくれと髪の毛を渡されてな」

「それで面白い結果がでた。綾波レイのDNAデータは人と天使の混合が見える。

その人のデータがさらに驚きさ。もっとも予想できた範囲内だけどね」

法夜が書類を読み進める内に渋い顔になって来た。

「ユイ嬢ちゃんのDNAか。碇老がこれを知ったらなんというかな。

だがJAのデータ改竄や今まだの違法行為、ゼーレへの圧力なんか何とかなるか」

「なんとかってどうするつもりですか」

「綾波レイを私が引き取る」

「それって可能なのかい」

「ようはあの髭を力押しで何とかすればいいだけだ。冬月先生は説得が可能だからな」

「報告は以上だよ。私は戻らせてもらうからね」

「ああ、すまなかったな優」

優も一礼して退室していく。

「さて、メルフィ本日の予定は何が残っている」

「特に何も。後は自宅に戻ります」

「それなら食事に付き合ってくれ。ドイツ料理の美味い店を見つけてね、一緒にどうだい」

「・・・分かりました。ご一緒します」

「それなら早速いこうか。・・・・ん」

室内天井部の空間が揺らぎだし黒衣の衣をたなびかせ黒天女が舞い降りる。

黒天女がぬかずく。

「ヌシ様、申し訳ありませんが重大な事態が・・・」

「どうした」

「シルビア様から『カードが二枚欠けたと』とお伝えするようにと」

「何!本当か!」

「はい、『ラビリンス』の理事達は集まっておりです。ヌシ様も至急ということです」

「そうか、メルフィ。すまないが今度この償いはする」

「はい、シンジ君には私の方から連絡をしておきます」

「頼む」

メルフィが一礼して退室する。

「それではヌシ様。ゲートを」

「分かった」

部屋の中央に立ち呪文の詠唱に入る。

「時を越え、空間を越え、界と界との狭間に在りし城。城主たる我が名の下に門を開けよ」

二人が立っていた場所に光柱を作る。

「我を導け」

柱の中で空間転移が起こり二人が柱と供に消える。



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設定



メルフィ ナーヴ

フランス国籍

魔道省主席補佐官

元はイヴとコンビを組んでフランスに点在する書物などの保護を担当していた

だがイヴと共に事件に巻き込まれ法夜に助けられる

財団から魔道省に転属になり会計監査や一般的な雑事を行う

優が裏の魔物関連専門なのに対してメルフィは表に対するいっさいを取り仕切っている

その実力は「ナーヴ女史が風邪を引くと魔道省は半身不随になる」と噂されるほどだ

黒いスーツを愛用しメガネをかけてクスンだ赤い髪をショートにしている



倉木鈴菜 金星(ビーナス・美と愛)牡牛座トーラス

父親が法夜、コウイチロウの知り合い

倉木グループ当主、倉木浩一(旧姓・羽山)の妻

古の祭祀に通じ儀式のほとんどを取り仕切る。

「陰の巫女王」と呼ばれる。

ラン・A+



倉木水菜

鈴菜と同じ浩一の妻。双子。

幼い頃から特別な環境で育てられうまくしゃべることができない。

理解できるのは浩一、鈴菜、法夜、メイド達だけである。

「陽の巫女王」と呼ばれる。

ランク・A+



倉木浩一(旧姓 羽山)

水菜、鈴菜の夫。重婚者。

連城財団の中核倉木グループの当主。

ある儀式で太古の山の神の力をその身に宿している。

「巫女の供立ち」といわれる。

ランクA−



栗原沙也加

倉木家のメイド

コケティッシュな容姿とお茶目な性格で愛されている。



春川知美

倉木家のメイド

メガネをかけ髪をツインテールにしている。

保護欲をかきたてる容姿をしている。

昔から鈴菜に仕えている。







マシン

特別改造SSTO「ゴグマゴク」

法夜が移動する際に使う小型長距離旅客機として使用。

エアーフォス1以上の防御力と機動性を持つ。







武器

『神衣』

神や悪魔が現実世界に干渉するさいに高位の者ほど天界や魔界に縛り付けられる。

低位の者は界を越える際に力が半減している。

強い者は力の抑制、弱い者は力の増幅のために依り代とする物が必要とされている。

元の世界に戻る際や消滅する再に依り代がそのまま残される。

それは力の強い者なら扱える。



『アーマー』

神衣を参考に人が扱えるように人が創った鎧型の増幅器。

「エレメント・エンジン」で世界に存在する元素を取り込み地上や海中や空中で稼動する。

上級者には調整された専用のアーマーがある。



『エレメント・エンジン』

錬金術を応用し世界に存在するの元素を吸収し任意の力に変換する永久機関。

現在制作に成功したのは日本のみ。

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あとがき

どうも、カオスです。法夜の手の平の上で踊ってもらいました。

この件の真相はネルフがJAにチョッカイを出してきたのを察知したある人物が法夜に報告、時田を責任者から解任しどうでもいい男を変わりに据える。

そしてネルフのプログラムを一部変更して「エレメント・エンジン」の搭載実験の隠れ蓑に利用、同時にゼーレの眼もJAに向けその間に神衣を日本に輸送する。

次回はようやく「ラビリンス」のメンバーが勢ぞろいです。

レイちゃんも近いうちに面白いことになります。

ご期待ください。

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トマトのコメント

オリジナル設定多いですね、この作品。

次ぎから次ぎへとオリジナルキャラクターが出てくる。

レイちゃんを引き取る策はうまくいきそうな気配ですね。

なんか後書き見てるとファンタジー小説に見えるます…。

では皆さん、カオスさんにぜひ感想メールをお願いします。

 

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