闇と福音を告げる者

第七話「迷宮と呼ばれし守護者達」





ディラックの海

無限の海とも呼ばれるこの空間は界と界とを隔てる壁であり、空間の中に見える光一つ一つがそれぞれ別の世界である。

通常、この空間に侵入するには強大な力で界の壁に穴を開けるか、

『回廊』と呼ばれる界と界とにかけられた橋のような空間を使うかしかない。

今、法夜と黒天女が回廊に到着した。



「ヌシ様、いかがされました」

「何者かが空間転移に干渉した」



そう言っている間に前方の空間が歪みだした。



「空間が捻れている。かなり無理に干渉したようだ。されにそこに穴を開けようとする。かなりの上位者だな。」



黒天女はその言葉に驚き法夜の前に庇うように進み出た。

しばらくして空間に黒い穴が空き、長身の男が二人出てきた。

片方はカラスの仮面に漆黒の翼、もう片方は赤黒い肌に二本の羊の角を生やしていた。

そこにいるだけで威圧感が伴い強力な魔力を感じる。

二人が片膝をつき臣下の礼をした。



「お久しぶりです。我らが王よ。この度はこのような無礼お許しください」

「唐突だな、アスモデウスよ。それにムルムル、今になって何のようだ」



法夜が黒天女を退かして冷たい声でカラスの仮面に応える。



「お戻りください。お父上のシリウス様も心待ちに・・・」

「ふざけるな!貴様らが私に!『私達』何をした!」

「御怒りごもっとも。ですが魔界の住民は誰しも今の『サタン』に不満を抱いております」



「だとしてもあの男はもう居ない。残念だったな」

今まで黙っていた羊の角の男ムルムルが立ち上がった。

剣を構えると法夜に向ける。



「誰がなんと言おうと我は貴方を連れ帰らねばならぬ」

「ムルムル、本気で私に敵うと思うか?」

「敵わずともシリウス様から命じられたことを我は全力で遂行するのみ」

「お前もか、アスモデウス」

「遺憾ながら・・・」

「そうか。ならばこちらもこのままで戦いのは不利だな。こい我が使い魔ダークネス、アースガデスよ」



法夜が呼ぶと影からダークネスと巨大なアイアンゴーレム・アースガデスが現れた。

黒天女と共に前に進み戦闘態勢をとる。



「黒天女に闇に鉄巨人、本気か。今回は引き下がるといたします。ですが未だルシフェル計画は進行中です」



嬉しそうに笑いながら穴に進んでいく。



「さっさと消えろ!」

「そうでした。弟君がお戻りになりました。それでは」



アスモデウスとムルムルが再び穴に戻り穴が塞がった。

法夜が使い魔達に向く



「ダークネス、アースガデスご苦労だった」

「主よ我ら主の盾にして剣たる者、いつでもお使いください」



ゴーレムも深く頭を下げもとのようにダークネスと影に消えていく。

法夜が大きく溜息をつく。



「ジン、戻ってきたか」



黒天女が何か言おうとする間にもう回廊を進んでいく。







オリュンポス

そう名づけられた城がディラックの海に存在する。

中世のヨーロッパの城をモデルにしたような造り、それに城内に狩猟場や湖まで入っている。

人口の明かりも魔力で作られて光球になって城の周りを太陽のように周り昼と夜を作っている。

この城はラビリンス創設当初に建造され当時最高の実力者達の手でこの空間に放たれた。

建造理由として力ある者が迫害された時の避難所、

力の訓練所などがあったが今では他の勢力が手出しできないので完全な要塞となりラビリンス本部となった。

何世代も改築が繰り返されその都度、城の武器も強化されたためもはや並の者でも手出しできない。

城内の大広間に入ると18人の男女がそれぞれ起立して一礼する。

全員、黒服や黒マントの黒系衣装に胸元にそれぞれ金文字でナンバーが縫われている。

法夜が迷わず一番奥の椅子に座り全員着席する。



「報告が聞きたい。シルビア。」



脇のドアが開き色白の美女が白いドレスのような格好で入ってきた。



「報告いたします。この度イギリスの特異点『ストーンヘンジ』で異変が発生。

ラビリンス特殊法戦部隊と理事の渚・リュウジ・ローレンツと安藤ミカが向かい上級魔族アムドゥスキウスとウァプラと交戦、

撃退に成功するも部隊員20名中15名死亡5名が重体、御二人も死亡が確認。

これによりアルカナの『JUDGEMENT』と『DEATH』の席が空きました」



報告が終ると全員からどよめきが起こる。



「これは不味いな。ハイ・ナンバーが一度に2人とは由々しき自体だ」

「マイエルリンクこういってはなんだが善戦したほうだな。

アムドゥスキウスとウァプラは魔界でも大公爵の力を持つそいつを撃退できた。特異点の開放も防ぐ事ができた」

「・・・そうだな、ミカエルの言うとおりだ。それに理事が居ないではまずい。

誰か推薦する者はいないか」



法夜も賛同し周りを見回す。

みんなガヤガヤ相談を始めた。

それぞれの利害も微妙に絡むため、白熱するかと思われたがあっけなく静まる。



「やはりここは『審判』の席は渚の子供のカヲルが継ぐのがいいでしょう」

「しかしまだ14歳の子供だ」

「はい、そこで貴方にカヲルをお預けし訓練したほうが良いでしょう。ちょうど御養子も同い年のはず」

「ガウィン、それならいいが『死神』の席は誰が埋める」

「それですがシルビア殿がいいのではと思います」

「構わんのかシルビア」

「はい、城の管理などは片手間ですみます。問題ありません」

「そうか、それならこれで決まりだな。他に何か議題はないか」

「僭越ながら今ひとつ」

「我らラビリンスは人が生まれた時からこの世界を脅かす全ての存在と戦ってきました。

本来、裏で行動するものを今回は表に出てきた。なぜですか」

「デイビイット、皆も聞いてくれ。あの使徒というのは間違いなく使徒の力の欠片から創られたのは間違い。

それにゼーレが関わってきている」

「ふん、たかだか二千年程度の歴史しかもたない組織などどうという事は無い」

サー・マイスンが馬鹿にしたように答えると賛同の声があがる。

「確かにな。しかし奴らはセカンドインパクトを起こした。

北極の特異点をS2機関で開放され莫大な異世界のエネルギーが流れ込んだ結果が現在の状況だ」

「ウム、世界殿の言う事わかる。我らの内に誰がS2機関、

エレメント・エンジンのプロトタイプを一介の学者が創ると考えた。これ以上特異点の開放を許す訳にはいかん」



サイデスも難しい顔をする。



「ええ、これ以上の封印の開放は世界の崩壊を意味します」

「サルビア君のいうとおりだね。エレメント・エンジンの管理は厳重に行わなければならないと思いますが」

「そうだな、ロザリア。諸君残った特異点はイギリス『ストーンヘンジ』、アメリカ『イエローストーン』、

中国『始皇帝陵』、オーストラリア『エアーズロック』、日本『黒い月』の五ヶ所だ。

ゼーレの監視共に防備を強化してほしい以上だ」



法夜がそう締めくくってそれぞれゲートに向かっていく。



「シルビア、ヒュウ、シリウス、バーシアは私の執務室に後で来てくれ」







執務室

魔道省と同じ造りの部屋に全員が集まった。



「ここに来る前にアスモデウスとムルムルに会って意外な事を聞いた。ジンが生きていた。

さらにルシフェル計画がまだ動いている」

「法夜、たしかにあの時殺したはずだ」

「ええ、父からもそう聞いています。間違いではないでしょうか」



シリウスとヒュウイックが驚きながら応える。

シルビアは何でもないようにしているが手元が震えている。

バーシアはタバコを吸い始めた。



「それでおそらくシンジを狙ってくる可能がある。彼女の例もある。シリウスは封印図書館で使徒のことを調べてくれ。

バーシアとヒュウはシンジ達の護衛を頼めるか」

「わかった。親友の頼みだ引き受けた」

「私も伯父さんの頼みですから引き受けます」

「あたしもシンジのボウヤに会いに行きますか」



全員納得したようなので安心した顔で法夜が礼を言う。



「それでついでにネルフの牽制の為に現在輸送中のエヴァ弐号機に引っ付いてくれ。

太平洋艦隊だから提督はマイクだ。話はつけてあるから南アフリカから乗り込んでくれ」

「準備万端ね。それでオーレリィやヴァネッサと乗って来いってわけ」



バーシアがやや不機嫌そうに皮肉る。

法夜は平気な顔で応える。



「仕方がないだろう。埋め合わせはする」

「そうね。あんたの手料理なんていいかもね。まだマルゴーの90年残ってるでしょうからそれもいいわね」

「・・・仕方が無い。わかったよ、負けました」

「ん〜〜よろしい。それじゃあいきますか。シリウス先いってるから」



法夜にウインクをしてさっさと出て行く。



「伯父さん、いい加減身を固めたらどうですか」

「ヒュウ、法夜には事情があるそれよりも図書館の鍵を貸せ」



ヒュウイックから鍵もらうとさっさと出て行く。



「皆どうしてこうせっかちなんでしょうか。私もいきますよ」

ヒュウイックもブツブツいいながらもう出ていく。

「あいつも人のことが言えんな。さて、シルビアお前には別の話だ」



シルビアが強張った顔で法夜を見つめる。



「ミネルバの敵討ちは絶対に禁止だ。理由はわかっているな」

「わかりません」

「どうしてだ」

「お父様、お母様の敵討ちがなぜいけないんです!お父様がやらないのなら私が!」

「それでミネルバのように殺されるか。あいつは私の攻撃から生きて帰ってきた。お前では無理だ」

「いえ、本来の力を解放すればだいじょうぶです。お父様、許可をください」

「本来の力の覚醒は下手をするとお前の意識が消え戦うだけの人形になる。それでもやるつもりか」

「・・・覚悟の上です」



大きな溜息をつきながら写真立てを机から取り出す。



「私は頼りない父親か。」

「いいえ、お父様は私や黒天女達に善くしてくれています。」

「ならこの話無しだ任せろ。それで他に聞きたい事があっただろう。」

「ええ、神衣とエンジンのことです。なぜ報告しないのですか」

「理由はゼーレだ。理事会にもゼーレの息のかかった者が出てきた。

でなければプロトタイプとはいえエレメンタト・エンジンの事が漏れるはずがない。

だから神衣の発掘再開もエンジンの実用化も秘密にした。現在は出先機関のオリュンポスを手にしただけだ。

だがこれ以上は許さん」

「わかりました。ユグドラシルのプロテクト上げておきます」

「頼む。私はこれから所用で若菜の所だ」

「ええ、わかっております。My master」

おどけた口ぶりのシルビアをクスクス笑いながらゲートを形作り自分の世界戻っていく。

「お父様、私も女です。おわかりですか私のこの気持ち・・・」

先ほど変わって真剣な口調でつぶやいた後に部屋を出た。






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設定

セカンドインパクト以前からの在籍者を古参、以後の者を新参する。

Tから]TまでをLOWナンバー、]Uから]]TまでHIGHナンバーと呼称される。

ナンバーは力の強さを表す。大きければ大きいほど強い。





ラビリンスメンバー



デイビイット・ロッド 男

「THE MAGICAN」

新参メンバー

アメリカ連城財団統合局長、符術を得意とする常識派



ミンフィア 女

「THE LADY HIGH PRIESTESS」

新参メンバー

華僑系列の大企業・九竜(クーロン)の経営者

道術を扱う



バーシア・デュセル 女

「THE LADY EMPEROR」

新参メンバー

ドイツ連城財団総合警備部門責任者

槍を使う



アーズマス・フォン・マイエルリンク 男

「THE EMPEROR」

新参メンバー

ドイツ貴族、伯爵。ドイツ政界の大物

レイピアを使う



シリウス・リ・ライクリング 男

「THE HIGH PRIESTESS」

古参メンバー

イギリスの複合企業「H&R(ハノヴァー&リヴァプール)」カンパニーの社長

魔銃と剣を使い



ブレイズ・ロックマイヤー 男

「THE LOVERS」

古参メンバー

アメリカ陸軍対異界用特殊部隊ゲートガーダー隊長

特殊処理をした重火器をその巨体から自在に扱う



テトラ・サイフォート 女

「THE CHARIOT」

古参メンバー

イスラムの製薬会社「アンダカ」の経営者

千年以上生き続ける魔女

魔道、魔術、錬金術のエキスパート



サー・マイスン 男

「STRENGTH」

新参メンバー

イギリスの退魔組織『円卓の騎士団』の副団長。古くから続く騎士の家系でサーの称号を誇りにしている

剣を使う



サイデス・アッブース 男

「THE HERMIT」

古参メンバー

中東の王族の出の大富豪。キャラバンと放浪を愛する好々爺。

精霊使いで精霊王クラスすら自由に使える



アルナ・ジルフィーナ 女

「WHEEL OF FORTUNE」

新参メンバー

アメリカのロックフォード系財閥の令嬢

先天的に精霊と会話ができ自由に使える



サルビア・ロイド 女

「JUSTICE」

新参メンバー

国連軍対異界用特殊部隊オメガの指揮官

体術と魔法を使う



ロザリア・ジリア 女

「THE HANGED MAN」

古参メンバー

ローマ教皇の懐刀イタリア名門貴族ジリア家女当主

エクソシストで法術を使う



シルビア

「DEATH」 女

新参メンバー

ラビリンス本部オリュンポスの管理者

魔法、法術、召喚術、ムチを使う。

前任者 安藤ミカ死亡



斎藤カズマ 男

「TEMPERANCE」

新参メンバー

第132代目皇居護衛筆頭剣士

刀を使う



ヒュウイック・フォン・リング 男

「THE DEVIL」

古参メンバー

ドイツ貴族、侯爵家の跡取り

槍、魔法、召喚術を使う



タオ・ファン

「THE TOWER」

古参メンバー

華僑の大物実力者

符術、道術、仙術を極めている。

ラビリンスの運営資金を担当



ルビアス・ホーセット

「THE STAR」

オーストラリアの大企業「ホーセット・カンパニー」の社長

魔術と剣を使う

敵対組織の監視を担当



ミカエル・ライグース

「THE MOON」

古参メンバー

国連事務総長付きの秘書

魔術、召喚術を使う

ラビリンスの対外交渉を担当



サー・ガウィン

「THE SUN」

古参メンバー

イギリスの退魔組織『円卓の騎士団』団長

剣を使う 聖剣エクスカリバーを所持

ラビリンスの実働部隊を指揮する



現在、空席

「JUDGEMENT」

渚・カオル・ローレンツが就任予定

ラビリンス最大の超兵器「浄化の聖火(メギド・フレイム)」の発射申請ができる

前任者 渚・リュウジ・ローレンツ死亡



連城法夜

「THE WORLD」

古参メンバー

連城財団会長

古今東西の魔術や法術、戦闘術に通じている

ラビリンス最高意思決定権を有する


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あとがき

どうもご無沙汰してました。カオスです。

今回はついに“あの女”のことがいくらか語られました。

そしてセカンドインパクトの真相、戻ってきた法夜の弟、魔界で進められて行く計画。

次回はいよいよアスカとチーム『ノルン』が登場。

基本的にアスカの扱いはどうしようかな?

何か希望がありましたらメールをください。

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トマトのコメント

>たかだか二千年程度の歴史しかもたない組織

…凄い言葉ですな。普通2000年も続いている組織なんかありませんよ?100年でも立派なもんです。

さて、そろそろカオルの出番ですか?

彼が、本編通り、第17使徒なのかどうかはまだわかりませんが…。

あと、あいかわらずキャラクターが多いですね。

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