第七話「両親」

第四使徒戦、信長がいないため、作戦の指揮は葛城ミサトが取ることになった。彼女は15年前、使徒のせいで両親をなくしており、その復讐に燃えているのだ。猛勉強して、NERVに入ったのもその為である。

すでに、海から使徒は上陸済みで、森の奥に進む。木々などの障害も無視して、どんどん壊しながらNERV本部に進行して行く。もう、司令室の間近に迫っていた。

さっそくミサトは山間部から通常兵器で迎撃の指示を出すが、ハッキリ言って、ミサイルもレーザもまったく効いてはいない。ただ、ミサトもその辺は予想済みであった。

やっぱり、EVAじゃないとダメね・・・。まったくこの使徒迎撃システムって、何のためにあるのかしらね・・・。EVAの緊急脱出ポット以外何も意味ないじゃない。

「エヴァ出撃、用意して。」

実は司令も海外に出張中である。副司令は一応いるのだが、戦闘に関しては不得意なため、事実上、この戦いで最高の権限を握っているのはミサトであった。

エヴァの出撃準備が完了した。目をつぶって集中しているシンジ。司令室からのコール音が鳴る。うっすらと目を開け、ミサトの声に、耳を傾けるシンジ。

「シンジ君。A.Tフィールドの展開と同時にバレットガンの一斉発射。いつもの練習通り、やってくれればいいわ。」

「了解しました。」

「行くわよ〜。エヴァ初号機、発進。」

前回の使徒戦と同じように、高速エレベータで初号機は地上に送り出された。シンクロ率42.3%。ハーモニクスなどの異常は何もなし。シンジは短期間ながら訓練もしており、前よりはるかにマシな状態と言えた。

地上に到着した直後、すでに使徒は初号機の間近にいた。正面のビルのシェルターが開き、そこから大型の銃、バレットガンを取り出し、撃つ構えをするシンジ。

「準備はいいわね、シンジ君。攻撃開始。」

その声の直後、バレットガンを使徒に向けて放つシンジ。練習よりは、弾が多く命中している。しかし、例によってまったく使徒には、効き目がない。

闇雲に弾を撃ちつづけるシンジ。だが、使徒に対しては大量の弾もまったく効果がなく、逆に、ものすごい爆煙で使徒が見えなくなってしまった。ミサトの怒号が鳴り響く。

「あのバカ。何やってんのよ。」

そして、爆煙の中から、使徒の触手であるムチが伸びてきた。ものすごく強力な威力で、あの硬いバレットガンの砲身が真っ二つになってしまう。早くもエヴァはピンチを迎えてしまう。

ミサトはシンジに予備のバレットガンを取るよう指示する。武装ビルのシェルターが開き、バレットガンが姿を現す。しかし、シンジは、あせって何も聞こえていないようだ。

シンジの目は完全におびえてしまっている。使徒が再びムチを伸ばしEVAを持ち上げる。初号機の重い体が、なんと上空10M以上も飛ばされてしまう。

なんとか起きあがったシンジだが、落下したさいの強力な衝撃によって、アンビリカブルケーブルが切断してしまった。内部電源のエヴァ起動可能時間は五分である。

シンジはなすすべなく、使徒の腕に拘束されてしまった。再び宙に大きく吹っ飛ばされる初号機。約40M先の山に衝突。だが幸いEVAは無事だ。なんとか起きあがろうとしたその時・・・

なんとクラスメイトのトウジとケンスケが、正面にいた。このまま起きあがれば、彼らを踏みつぶし、殺してしまう。使徒は光のムチで攻撃して来るが、シンジは寝転んだ体勢でなんとか耐える。

「二人とも、エントリープラグに入って。」

あっけに取られてしまうミサトとリツコ。一般人をEVAの中に入れるわけにはいかない。EVAの中は超秘密事項でもあるし、何より異物をEVAに乗せるとシンクロ率はガタっと下がってしまう。

予想通り、シンジのシンクロ率は大幅に下がった。ハーモニクスにも支障をきたし、グラフにも大きなノイズが走っている。もう、戦える状態ではないとミサトは判断した。

「シンジ君。一時退却するわ。第15脱出ポットから・・・」

なんと、シンジはミサトの命令を完全に無視。初号機は、プログナイフを取り出し、前かがみになって、そのまま突進して行く。ムチが刺さっても気にせず突進を続ける。

シンジは叫びながら使徒の弱点であるコアを刺した。使徒は今までのように自由に動けなくなり必死にもがく。

だが、人間で言えば、これは心臓をえぐり獲られているようなもの。いかに使徒と言えどもう限界だった。

コアとナイフの間に、熱い火花が飛びかう。じわじわっと、プログナイフはコアの奥に突き刺さり、使徒の抵抗もだんだん弱まって、ついにまったく動かなくなった。この瞬間の初号機の活動可能時間は34秒だった。

「パターン青消滅。第四使徒は完全に沈黙しました。」

濃が勝利の報告をすると、NERV本部は大騒ぎで歓喜の声が響きわたる。しかし、この作戦の指揮を事実上取ったミサトの顔色は、非常に険しかった。

「シンジ君、どうして私の命令を無視したの。もし、運良く使徒のコアがつらねけなかったら、どうするつもりだったの。」

シンジは簡単な身体検査を受けた後、ミサトの部屋に呼ばれて来ていた。信長もすでにNERVに戻っており、シンジの戦闘の様子もビデオで見て、ミサトの横にいた。

シンジはずっと沈黙のまま。ミサトはさらにお説教を続けるが、シンジはまったく答えようとしない。信長はただ黙って二人を見つめていた。さすがにミサトが疲れて口を休めたとき、シンジがボソッとつぶやく。

「いいじゃないですか。勝ったんですから。そんなことどうでも。」

当然ミサトは激怒。シンジの胸倉をつかみ、バジっと一発、強烈な平手を食らわせる。戦闘訓練を長年受けつづけてきたミサトの平手である。シンジのほうは真っ赤にはれた。

信長は、ミサトに呆れかえって、あとは自分がなんとかするからとシンジを引き取る。

こういうケアは自分より濃のほうが得意だと判断し、濃は冬月に許可を貰い仕事の途中でシンジを連れ帰ろうとしたが、その場でNERVの処分を待って欲しいと言われた。

信長は今回の事でミサトの状況判断能力に失望していた。

まず、始めに使徒に向かってバレットガンを撃って煙幕が上がってしまったときシンジを”バカ”と叱った事だ。自分たちはそんなこと説明してない・・・あれは、訓練をはじめたばかりの彼の責任ではない。

むしろ、ああなってしまったのは、ミサトの責任だと言える。

そして、その攻撃で、ミサトは使徒にバレットガンが効かないと判明したのに、再びバレットガンを装備させようと指示していた。自分ならあの時、近接戦闘に切り替えていたはずだ。

ミサトがまともだったのは、最後の退却の判断はだけだ。結局、冬月副司令の判断で、シンジは3日間の独房入りが決定した。

命令違反をしたのは事実だが、訓練もあるので、あまり重い処分にするわけにも行かない。まあ、やむを得ない処置かもしれない。

だが、濃が言っていた通り、平凡な中学生にその処分はあまりに重すぎた。独房から出た後の彼は相当NERVと言う組織に嫌悪感を起こさせてしまったようで、以前に増してそっけない態度しかとらない。

ついには家出をしてしまった。濃は自分の責任だとあたふたして、急いでシンジを探しに言った。シンジが家出したことを一応NERVに知らせる信長。

まあ、常にシンジには護衛を兼ねた監視の諜報部がついているので、問題ないだろうが。携帯電話のコール音がなる。

「もしもし、信長さん。加持リョウジです。ご依頼の件の中間報告をお知らせしますね。実は碇シンジの母親、碇ユイは11年前、初号機に溶けてなくなった事が判明しました。その時、本人は覚えてないようですが、シンジ君もその光景を見ていたようです。」

「なんだと。間違いないのか。」

「ええ。あと、死んだリっちゃんの母が碇司令の愛人だったそうです。その上、現在リっちゃんも碇司令の愛人だそうです。あっ、リっちゃんってのは赤木リツコの事ですよ。」

衝撃の事実だった。まさか、母親がなくなった元凶をシンジが乗っていようとは。碇司令の愛人も何人かいておかしくないとは思っていたが、まさかリツコとそう言う関係だったとは。

母親の死・・・、信長は自分の母親を殺していた。あの時代はそうしなければ生きてはいけなかった。もう肉親を手にかけることは慣れていて、その時は別に罪悪感も寂しさも感じなかった。

だが父親が病で倒れたときは悲しくて仕方なかった。あの葬式で砂をばらまいたのは、父親への感謝だった。父親は生前、信長を常識外れの子に育てようと仏教教育などまったくしなかった。

これは当時としては異例の事だ。そして信長に好き勝手に遊ばせた。これからの時代を変えるには今までの考え方は通じない。宗教など、人間のつくったまやかしに過ぎないと。

そして、父親は自分の死によってそれを証明してくれた。信長は父親の回復を祈って必死に仏に祈ったが、まったく効果はなかった。信長が仏や神に祈ったのは、これが最初で最後であった。


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